06 | ツンデレ デコレーション





『 ツンデレ デコレーション 』





「――お前って、美形だよな」

 隣を歩く骸を見てると、そんな言葉がなんとなしに口から出てきた。
「何ですか、藪から棒に」
 今日は黒曜の制服じゃなくて、どこにでもあるような服装だけど、それが逆に目立ってるし。
 俺と並んでるから余計に背が高く見えるし、実際かなりスタイルいいし。
 片手にチョコレートのジェラート持ってるくせに、それすら様になってるし。
「すれ違う人みんな振り向いてんの、気づいてる?」
「このオッドアイが珍しいだけでしょう」
 確かにそれもあるかもだけど、その瞳を縁取る長い睫毛も、はっきりした目鼻立ちも、かなり魅力的だし。
 なんで自覚ないかな。
「かっこいいって言われたら、嬉しくならない?」
「別に」
「ふぅん」

 前のことだけど。
 獄寺くんにかっこいいねって言ったときは、嬉しそうに照れてたけど。
 山本にかっこいいよって言ったときは、笑ってありがとなーって返されたけど。
 ね、骸はどうするんだろ。

「なぁ、骸ってさ」
「何ですか」
「かっこいいよね」
 変な顔。

 それから、呆れたように視線をそらした。
「……嬉しくは、ないですね」
「えー」
 なんだつまんない。
 もっとわかりやすく反応するかと思ったのに。
 なんとも中途半端な――

「あっ! ちょ、たれてる!!」
 視線を振った先、骨ばった手の甲から肘に向かって、溶けたジェラートがチョコレートの道を作っていた。
「……あぁ」
 どうしようティッシュないし。
 服に付いたらシミになるし。
 どうしよう。どうしよう。
 なんて考える前に、体は動いていた。

 ――はぷり。
 骸の腕に噛み付いて。
 そのまま舌でチョコレートを舐め取って。
 それより下に落ちないように。
 手首まで辿って、そこで唇を離した。

「――な、」
 震える声。震える手。
 見ると、美形が真っ赤に染まっていた。
「君という人は何ですか!」
「何って何だよ」
「こんな、公衆の面前で、最悪です!!」
「早く食べないと、またたれるぞ」
「っあぁもう!」
 骸は急いでジェラートを食べ始めた。

 黙ってれば近寄りがたいほどかっこいい。
 でも、一心にジェラート食べてる姿は、なんかかわいい。
「何、笑ってるんですか」
「うぅん。あ、ついてる」
 口の端に残ったワッフルコーンの欠片を、唇でついばむ。
 固い、甘い、チョコレート味の、カケラ。
「―――――っ」
 その片目に負けないぐらいの赤。



 赤く赤く。



 デコレーションできるのは自分だけだって。
 そんな優越感ぐらい持ってもいいよね。

 なーんて。
 こっそり笑ってると、骸の怒声が降ってきた。
「少しは自重してください!!」

 ね、まだ顔赤いよ。