「――お前って、美形だよな」
隣を歩く骸を見てると、そんな言葉がなんとなしに口から出てきた。
「何ですか、藪から棒に」
今日は黒曜の制服じゃなくて、どこにでもあるような服装だけど、それが逆に目立ってるし。
俺と並んでるから余計に背が高く見えるし、実際かなりスタイルいいし。
片手にチョコレートのジェラート持ってるくせに、それすら様になってるし。
「すれ違う人みんな振り向いてんの、気づいてる?」
「このオッドアイが珍しいだけでしょう」
確かにそれもあるかもだけど、その瞳を縁取る長い睫毛も、はっきりした目鼻立ちも、かなり魅力的だし。
なんで自覚ないかな。
「かっこいいって言われたら、嬉しくならない?」
「別に」
「ふぅん」
前のことだけど。
獄寺くんにかっこいいねって言ったときは、嬉しそうに照れてたけど。
山本にかっこいいよって言ったときは、笑ってありがとなーって返されたけど。
ね、骸はどうするんだろ。
「なぁ、骸ってさ」
「何ですか」
「かっこいいよね」
変な顔。
それから、呆れたように視線をそらした。
「……嬉しくは、ないですね」
「えー」
なんだつまんない。
もっとわかりやすく反応するかと思ったのに。
なんとも中途半端な――
「あっ! ちょ、たれてる!!」
視線を振った先、骨ばった手の甲から肘に向かって、溶けたジェラートがチョコレートの道を作っていた。
「……あぁ」
どうしようティッシュないし。
服に付いたらシミになるし。
どうしよう。どうしよう。
なんて考える前に、体は動いていた。
――はぷり。
骸の腕に噛み付いて。
そのまま舌でチョコレートを舐め取って。
それより下に落ちないように。
手首まで辿って、そこで唇を離した。
「――な、」
震える声。震える手。
見ると、美形が真っ赤に染まっていた。
「君という人は何ですか!」
「何って何だよ」
「こんな、公衆の面前で、最悪です!!」
「早く食べないと、またたれるぞ」
「っあぁもう!」
骸は急いでジェラートを食べ始めた。
黙ってれば近寄りがたいほどかっこいい。
でも、一心にジェラート食べてる姿は、なんかかわいい。
「何、笑ってるんですか」
「うぅん。あ、ついてる」
口の端に残ったワッフルコーンの欠片を、唇でついばむ。
固い、甘い、チョコレート味の、カケラ。
「―――――っ」
その片目に負けないぐらいの赤。
赤く赤く。
デコレーションできるのは自分だけだって。
そんな優越感ぐらい持ってもいいよね。
なーんて。
こっそり笑ってると、骸の怒声が降ってきた。
「少しは自重してください!!」
ね、まだ顔赤いよ。