朝目覚めたら一番におはようのキス。
と思ったら夢の終わり。
ふて寝の二度寝で浮気を目撃。
しかも相手はどこぞの跳ね馬
よりにもよってあいつとなんて。
「――最悪じゃないですか」
ベッドに寝ているツナの上に跨ったまま、骸はやれやれと肩をすくめた。
「こっちが最悪だよ早く降りろこの変態」
朝っぱらから電波飛ばして何だこの不法侵入者は。
重い上に身動きも取れないし。
「まぁそんなわけで、」
「何がどんなわけなんだよ!?」
「夢は現実の上書きで忘れないと正夢になりそうなんで、」
「人の話聞けよ!!」
「最初の夢を現実にしようと思って寝起きを襲いに来ました」
「帰れぇ!!!」
すでに覚めた頭でもとっくに理解できる。
こいつ本気でアタマおかしい!
「……君には僕のこの苦しみがわからないというのですか?」
「わかるわけないだろ」
「なら想像してみてください。僕が君以外の人と抱き合ってるのを見ても、君は何も感じないと?」
ここでうっかり想像しなけりゃ、一瞬の隙も与えなかったのに。
一瞬の隙を見逃すはずもなく。
覆いかぶさるように、唇を重ねる。
それだけの短いキス。
離れたら、朝のあいさつ。
「おはようございます、綱吉くん」
「……」
「元気がないですね。朝からどうしたんですか?」
「お前のせいだろっ!」
繰り出された拳を軽くよける。
死ぬ気モードじゃないからいいけれど。
「……もういいから早く退けよ」
「おやおや、仕方ないですね」
ベッドから降りようとしたとき、不意に腕を引かれた。
「ん?」
無理やり押し付けられた唇。
それもすぐに離れてしまって。
理解に少しばかり時間を要してしまう。
「お、お前が悪いんだからな!」
「それは一体どういう」
「怖くなったんだよ、お前が、変なこと言うから!」
真っ赤な顔に、少し涙の浮かんだ瞳。
「それは……すみませんでした……」
謝りつつも、じわじわと広がる嬉しさに表情が緩んでしまう。
独占欲に縛られるなら、本望なのだから。
「最悪だよホント!」
違う誰かと楽しそうにしてる好きな人。
どうして気づいてもらえない。
手を伸ばしても遠のくばかりで。
やっぱり一緒にいれないんだと。
悲しい夢から覚めたら――