空を見上げれば鳥を羨ましく思う。
なぜ自由に飛べるのだろう。
海を見つめれば魚を羨ましく思う。
なぜ自由に泳げるのだろう。
いつの間にか絡まっていた。
見えない枷に膝をつく。
求めていた繋がりは重い枷だった。
「空を見てごらんなさい。飛行機に乗って、人は鳥よりも高く、遠くへ行ってしまうことができる」
水の音と枷の音が重なって。
澄んだ声が歪んで響く。
彼はこうなることを予見していたのだろうか。
「海を見てごらんなさい。船に乗って、人は魚よりも速く、遠くへ行ってしまうことができる」
苦しみと痛みは増えるばかり。
それ以上の喜びもあったけれど。
「貴方は人間のくせに、鳥や魚に憧れるなんて、愚かしいこと極まりないですね」
それでも自由を求めてしまう。
飛行機じゃ知れない鳥の。
船じゃ知れない魚の。
がんじがらめでも、自由かもしれない。
「素晴らしい矛盾ですね。では、枷が外れた、その時は――」
空と海の憧憬。
あるいは人間の優越感。
すべて捨ててでも。
求めてしまったから。
「××、×××××××××」
ひとつだけの枷。
それだけで、
―――自由だと言い切れる。