19 | white snow white





『 white snow white 』





 白い。
 赤い。
 赤い。

 それは
 叶うことなら二度と
 見たくない
 光景



「雪、降るかも」
 どんよりと重たい雲。
 肌を刺すほど冷えた空気。
 吐く息の白さに期待を込めて話す。
「降りますかね」
 対極的なほど、感情の薄い声音。
 まるで雪など望んでいないような。
 ずっと遠くを見つめて。
「雪、嫌いなのか?」
「……どうでしょう、嫌悪、拒絶、否定、似て非なる……クフフ、わかりません」
「お前の言い方がムズすぎて、俺もワケわかんねぇよ」
 かたや笑い、かたや怒る。
 ささやかにも幸せと感じることのできる空間。
 それでも上書きで消すことの叶わない、赤の色。
 雪の上に散る。
「……あえて言うなら、記憶のフラッシュバックでしょうか」
「ふらっしゅ、ばっく?」
「学校で習いませんでしたか? 過去に遭遇した一場面が、とあるきっかけで、リアルに思い出されてしまう現象のことです」
 悪い意味にこそ使われる。
 悪い記憶にこそ使われる。
 網膜に焼きついた傷痕。
 雪を溶かす血と、どこまでも白い雪原。
 殺した人間の名前も場所も覚えていないのに、その光景だけが、理解できない感情と共によみがえる。
「それって、忘れられないの?」
「できるでしょうけど、永遠には無理でしょうね」
 忘れては思い出す、その繰り返し。
「……じゃあ、思い出せないだけたくさん、たのしいこと覚えてけばいいんじゃね?」
「楽しいこと?」
「そうだ、雪積もったら遊ぼう! 他のみんな誘って、雪合戦とかしよう!」
 両手を広げて。
 高く空へ伸ばして。
 くるりと回って、笑う。
 真白な錯覚。
 ――あぁ、そうか。
 雪を溶かす鮮血。
 あのとき、汚してしまったと、思ったのだ。
 純白であった雪を、血と悪意で汚してしまったことを、ただただ後悔していたのだ。
「……やっぱ、イヤかな?」
 無言を不安に思ったのか、彼はうつむいていた僕の顔を覗き込んだ。
 笑って、ふるりと首を振る。
「いいえ、雪が積もるのが楽しみになってきました」
「そっか!」
 一足早く、花が咲いたように。
「じゃあ積もったら呼び出すからな、寒いとか面倒だとか言うなよ!」
「クフフ、それは約束しかねますね」
「おま、ちゃんと来いよ!」
 返事代わりに笑い声をこぼす。



 白い。
 白い。
 もう汚さないように。
 君が汚れないように。

 綺麗な君だけを記憶にとどめて。
 願う。






× × ×

ホワイト綱吉です。癒し系です。
骸さんはどんどん癒されて、どんどん変態になってけばいいと思います。