手を当てて隠したのは、
口許でなく本当の言葉。
「骸」
「何ですか?」
「骸って本名?」
「似合いませんか?」
嘘をつく。
笑って誤魔化す。
ひらりかわされる。
本音は見えない。
「まだ、乗っ取ろうとか考えてる?」
「できればボンゴレはいただきたいものですね」
「組織を? 俺を?」
「貴方のいる組織を」
「どっちが目的なんだよ」
「じゃあ、綱吉くんで」
嘘か本当か。
教えてもくれない。
知りたくても。
嘘しか教えてくれない。
「骸さ、楽しい?」
「そうですね」
「嘘つき」
「そうですね」
嘘なんて誰でも言える。
それは本当。
でも彼の嘘は自然すぎて。
まるで、願い事を口にするよう。
「俺、骸のこと、好きだよ」
「僕も綱吉くんを愛していますよ」
彼が嘘をつき慣れているのなら。
それでもいいと思う。
隠し事が多くても。
ひねくれ者の天邪鬼でも。
彼が俺を愛しているということ。
これだけは、
信じて損はないはずだから。