初めて「コワイ」と感じた人。
憐れみと同情を拒む人。
最初に感じた絶対零度の冷たさは――
同じシーツにくるまれて眠る。
独り、緩やかに醒める夢。
繋いだままの手に、体温。
「……僕ね、綱吉くん」
呼吸に合わせて揺れる髪をぼんやりと見つめながら、聞かせるでもなく言葉を紡ぐ。
「初めて、だったんです」
彼が起きているかはわからない。
ただ独り言のように。
「キスも、セックスも……こうして触れ合うことができると、知ったのも」
決してキレイな行為ではない。
宗教によっては禁忌とされる。
非生産的で、生物として破綻している。
それでも求めて止まない。
足りない部分を繋がることで補おうとする。
それはいやらしくも、愛し合う行為。
「こんなの、初めてなんです」
熱を持って広がる感覚。
愛しいと思う。
一緒にいたいと望む。
ずっと。
もっと。
触れ合いたいと、切に願う。
「……僕は今、満たされているのでしょうか?」
指先に硬い髪。
柔らかな頬。
ゆるりと現れた色素の薄い瞳が微笑み、小さな唇が誘う。
「わからないなら、キスして、もう一度考えればいいよ」
誘われるままに重ねて。
細い腕が抱きしめる。
「それでもまだわからないなら、わかるまでこうしててやるから」
幼子にするように。
優しく、何度も、背を叩く。
「だから今はまだ、朝が来るまで、一緒に寝てよう?」
直接伝わる温もり。
伏せた瞼に降りるキス。
薄い暗闇の中。
怖くはない。
重ねた鼓動は、確かに響いていて。
短い夢へと導くから。
大丈夫。
僕も彼も、ここにいる。
穏やかな気持ちと。
ココロ。
初めて「イトシイ」と感じた人。
温もりと愛情を求める人。
最後に感じた絶対零度の冷たさは――
鼓動に溶けて、夢の中。