『 大事なモノには 「 鎖 」 をつけて 』
何よりも愛してあげるから。
どうか何処へも逃げないで。
チリ、と金属の擦れ合う音。
それは彼の細い首から伸び、ベッドの柱へと続く。
昨夜に啼かせた痕がまだ消えない。
嗄れてきた喉にキスを落とす。
「……もう、見つかる頃じゃないか……?」
彼を閉じ込めて一週間。
彼と閉じ籠って一週間。
ずっと、ずっと、同じベッドの上。
「そろそろ、雲雀さんがここ見つ――っ」
所々に花弁を散らす肌に爪を立てる。
「僕以外の名を口にしないでください」
流れ出る血液を舐め取り、新たに鬱血の痕を残す。
「君は僕のものです。誰も、誰にも、誰であろうと……」
「骸」
鈴のような金属音。
乾いた唇が触れ合う。
「心配しなくても、俺はずっと、いつまでも、お前のものだから」
「けれど、君は、いつも誰かと一緒に笑っていて、誰にでも愛されて、」
嫉妬。羨望。独占欲。愛憎。
そのすべてが醜く、知らしめる。
「そう……まるで、僕など必要ないほどに――」
「必要だよ!」
無理に大きな声を出したせいで、激しく咳き込んでしまう。
それでも伝えなきゃいけない。
「……必要に、決まってる、だろ」
この身にぶつけられた激情。
黒く、濁っていて、タールやヘドロのようにまとわりつく。
「骸がいなきゃ、他の誰と一緒にいたって、愛されたって、こんなに、満たされることなんてない……」
いつしか、心地よいと感じるようになっていた束縛。
少しの潤いを求め、舌を絡ませる。
きつく抱きしめて、爪を立てて、呼吸よりもキスを繰り返す。
「愛してる。誰より。だから」
全身の痛みが実感させる。
愛されているという事実。
「もっと愛してみせて……」
薄暗く閉ざされた世界で。
たった二人きりの世界で。
永遠を望んで。
彼と共に、手の中に閉じ込めたものは。
何処へも逃がさない。
何より愛しているのだから。
『大事なものには「 鍵 」をかけて』