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『 nick−name 』





「起きろツナ、撃ち抜くぞ」
「ひっ、朝からやめろよ!」
「早く顔洗ってこい」
「わぁかってるよもおぉ」

「おはよぉ、ツナ兄ぃ」
「おはよー」
「今日は早起きなんだね」
「なんつーかもう無理やりだけどな……」

「ツッ君、忘れ物!」
「え? あ、ありがと、母さん」
「気をつけて行ってらっしゃい」
「はーい」



「十代目! 昼飯食いに行きましょう!」
「うん、今日も屋上?」
「たまには中庭で食わね? ツナ」
「天気いいし、そうしよっか」

「ツナ君、わたしたちも一緒に食べてもいいかな」
「ちょっとキョーコ、ダメツナなんかと……」
「十代目にケンカ売ってんのか黒沢!」
「まぁまぁ」
「えと、じゃあ、一緒に行こっ」



「よう、沢田! 今、帰りか!」
「うわ」
「ちょうどいい! ボクシング部に寄っていけ!」
「てめ、性懲りもなくっ」
「き、今日は遠慮しときます!」

「君たち、また群れてるの」
「ひっ」
「げ、風紀委員の」
「僕の目の届く所で群れるなんて、いい度胸だね」
「ここは任せてください、十代目!」
「ちょ、ま、まっ」
「咬み殺す」



「あ! ツナさぁん!」
「うわっ」
「今からケーキ屋さんに行くのですが、ご一緒しませんかっ?」
「え、ケーキ?」
「産地直送厳選カカオのチョコレートケーキが夕方からの数量限定販売なのです!」
「へぇー……」




 たくさんの、色んな知り合いから呼ばれる、統一性のない名前。
 ツナとか、十代目とか、さんとつけたりくんをつけたり。
 耳に馴染んで久しい呼び名の数々。
 その中で。
 じんわりと熱を持って響くのは、ひとつだけ。



「ボンゴレ」
「……」
「おいしそうな箱を持ってますね、ボンゴレ」
「……」
「おや、無視するつもりですか? ボンゴレ」
「……」
「つれないですね、ボンゴレ?」

 いい加減、無視も我慢もできず、振り返って怒鳴りつける。

「何度も言わせんなよ!」
「おや、何度も話しかけているのはこちらですよ、ボンゴレ」
「違う! 俺が言ってんのは、ちゃんと、名前で呼べって、何回言わせんだってことだよ!」
「呼んでるじゃないですか、ボンゴレって」
「それは名前じゃねぇー!」

 返事をしなかったのは。
 本当に呼んでほしいのは。
 俺の名前は。

 笑い声。
 それから、少し高めの声が笑みを含んで紡ぐ。
「綱吉くん」
 手が腕を捕らえて逃げられず。
 耳元に吐息。
「綱吉くん。ねぇ綱吉くん、これで、いいですか?」
 一気に顔が熱くなる。
「い、い、いいも何も、それ以外だったら返事しないからな!」
「クフフ、意地っ張りですね、綱吉くんは」
 熱を逃がすように、ため息ひとつ。
「……家、寄ってけよ」
「いいんですか?」
「ケーキ、買いすぎたから」
「それなら、仕方ないですね」
 骸は自然な動作で俺のカバンを奪うと、空いた手に指を絡めた。
「恋人繋ぎ」
「ハズかしい」
 でも嫌ではないから。
 そのまま手を繋いで、歩く。


「綱吉くん」
「なんだよ」
「僕は数量限定販売の産地直送厳選カカオのチョコレートケーキでいいですよ」
「なんで知ってんだよ!?」






× × ×

だって最初から見てましたから。このHENTAIが!