ただでさえ暑い中、ナニしてんだろうなぁって思う。
「……んっ、あぁっ……ひぁ、んっ」
喘ぎ続ける喉が痛い。
渇いて。渇きすぎて。
ベッド脇に落ちたペットボトルを拾おうと手を伸ばす。
指先が触れる瞬間に取り上げられた。
「やっ、あ、んくっ……ん、んぅ……」
伝い落ちる液体。
ぬるいはずなのに。
火照った体には冷たくて。
「……はっ、はぁっ……あぁっ、そこ、やあっ」
繰り返す律動と。
水音と。
息遣いと。
途切れない痛みと快楽。
「や、もっと、ん、いっ、いぁああぁっ!」
弾けて。
広がって。
満ちて。
胸を焦がす。
「はぁ……はぁ、ん……んぅ……」
暑い。
クーラーも入れずに。
行為の余韻に。
泣きそうになりながら。
「……す、きぃ……」
途切れ途切れの呼吸で。
「ね、骸は、俺のものだよね、ちゃんと、伝わってるよね?」
睦言。
「なんか、もう、そばにいるだけでさ……死んじゃいそう」
戯言。
「だから…………」
無言の内にも。
絶え間なく。
熱に滴る汗のごとく。
幾粒も。幾筋も。
「……えぇ、すべて、わかっていますよ」
全部、互いの体に沁み込めばいいのに。
クーラーのリモコンに手が届かなくて、最終的にあきらめる。
なんでこんなことになったんだっけ。
もうわかんないや考えるのもメンドい。
今はとにかく。
「ぅあっつううう」
「さすがに三回もヤれば疲れますね」
横でしれっと言う恋人がムカツくので、とりあえず毒を吐く。
「一回一回が、しつこいから」
「おや、もっと、とねだったのは綱吉くんでしょう」
即座に応酬される。
数分前の自分を思い出して、脳みそが沸騰しそうになる。
口で勝てるわけないと知りつつも、応戦。
「や、やったのはお前だろ!」
「誘ったのは君でしょう」
「ばか!」
「もう一回しますよ」
「無理ごめんなさい!」
「クハッ」
やっぱり勝てずに謝ると、恋人は楽しそうに笑い声をこぼした。
ペットボトルの残りを分け合って。
手を繋いだまま。
ベッドの上でダラダラと時を過ごす。
その内、先に体力を回復させた恋人が言う。
「少し寝ます? それともシャワーに行きますか?」
汗で額に張り付いた髪を指先につまんで。
丁寧に梳いて。
心地よくて、甘えるように、その手に頬をすりよせる。
「シャワーしたい、けど…」
「けど?」
白濁とどうしようもない下半身から目を逸らし。
ため息。
「腰、立てそうにない……」
「横抱きでもいいですか?」
「何でもいい」
引かれるまま、白い首に腕を回す。
膝の下をすくわれたかと思うと、簡単に抱き上げられていた。
「普段もこれぐらい素直だといいんですけどね」
「たまに、だからいいんだよ」
「クフフ、それもそうですね」
甘えたいのはお互い様。
そうじゃなきゃ、こんな暑い日に求め合えるわけがない。
そうだ、思い出した。
さびしかったんだ。
暑さで。
熱さが消えて。
不安が。
唐突に押し寄せて。
触れた瞬間に。
求めていた。
――とか。
「どうしました? 顔真っ赤ですよ?」
顔を隠すように。
白い首筋に額を押しつけて。
汗の匂いにまた頭が痺れてくる。
「今さら、節操のなさを後悔」
「おや、それを言うなら、応えた僕も同罪では?」
鎖骨のくぼみに落ちた汗を舐め取る気配。
ぞくぞくと身が震える。
言葉に。感触に。罪深さに。
くらくらする。
「……のぼせました?」
「……かも」
まだ少し満たされそうにない渇きと。
それでもいつか終わる夏の暑さと。
伝わる体温が。
消えてしまう前にもう一度。
重ねて。