61 | GAME OVER!











「トリックオアトリート!」



 意気揚々と常套句を口にしながら。
 窓からの突然の侵入者。
 驚きのあまり起死回生のコマンドをミス。
 テレビからは『ユーアールーズ』の声。


「お、前、なぁ……」


 コントローラを投げるように置き。
 膝をずらして窓の方へ。
 向き直ったら。


「いつも言ってんだろ玄関から入れ!」
「どうせ今ひとりなんでしょう」
「理由になってねぇ!」
「すぐにでも逢いたくて」
「なっ」


 口許を歪めた笑顔。
 恥ずかしいセリフ。
 隠そうとしない態度に。
 頭が熱くなる。


 それで俺が喜ぶと思ってんのか。


「ねぇ、綱吉くん」
 侵入者こと骸は、窓枠から降りて、
「ケーキと」
 片手に白い四角い箱を、
「契約」
 片手に三叉槍を、
「どっちがいいですか?」
 軽く持ち上げた。


「え、え、笑顔で怖いこと言うなぁ!」
「クハっ」
「つかマジで武器出すなよ怖いわ!」
「クハハっ!」


 楽しそうに笑って、三叉槍だけ霧散する。
 手元に残った箱をテーブルに置いて。
 賞味期限とか印刷された紙を剥がして。
 テープをきれいに取って。
 中には。
 カボチャとお化けがひとつずつ。


「綱吉くんはどっちがいいですか?」
「どっちって」
「ケーキ、一緒に食べましょう?」


 にっこりと。
 無邪気な、とは言えないけど。
 笑うから。


「……食べる」


 お皿を取りに行くのがめんどくさいので。
 箱を破いて広げて。
 即席のお皿の上にハロウィンケーキがふたつ。


「こっちがショコランタンで、こっちがゴーストロベリィです」
「すさまじくシャレだな」
「味は保証しますよ」
「ショコラだから、骸はこっちだな」
「クフフ、当然です」


 プラスチックのフォークで。
 それぞれに一口。


「うまー」
「おいしいですね」
「カボチャの味する?」
「ただの着色料でした」
「一口」
「はい」


 少し苦い、ショコラ。


「イチゴいる?」
「じゃあ、一口」
「あー、ん」


 甘酸っぱい、ストロベリィ。

「クフフ」
「嬉しそうだな」
「くち、付いてますよ」
「えっ」


 混ざって、ショコラストロベリー。


「な、なんっ、何すっ」
「この方が、ふたつ分…いえ、みっつ分味わえますね」


 ペロリと唇を舐めて。
 意地悪く。
 三日月のように笑う。


「ば、このっ、ばか!」


 起死回生のコマンドは簡単によけられ。
 逆に腕を引かれ。
 ぎゅっと。
 閉じ込められたら。
 耳元に。


「トリックオアトリート?」



 甘いドロップ。






『 GAME OVER! 』






× × ×

とりっくおあとりーとぉ!! 甘い甘いツナムクくれないといたずらしちゃうぞ!?