ツナの所の赤ん坊から電話が来た。
「花火大会」をするのだと言う。
いつもみたいに他のみんなも集まるのだろう。
俺はいつも通り、二つ返事で承諾した。
―――どうせ、アイツも来るんだろうから。
「山本!?」
「よぉ」
集合場所の河原に着くと同時に、ツナに驚かれた。
また何も知らされなかったのか。
かわいそうだと思いつつ、いつものオーバーリアクションがかわいいとも思う。
最近は段々と、頼れる男になってきたとも思うけれど。
「あれ? 獄寺は?」
「すぐ来る」
「獄寺くんも呼んだの!?」
「十代目ぇ――!!」
犬のしっぽみたいに腕をぶんぶん振りながら、獄寺がいつものように嬉しそうに走ってきた。
本当にツナが好きなんだなぁ。
「んで、今日は何して遊ぶんだ?」
「花火で瞬発力の特訓だ」
「ええええ!?」
「文句言うな。よけろ」
慌てるツナを気にすることもなく、赤ん坊は『十連発アルプス花火』をツナに向けた。
有無を言わさず、発射する。
「死ぬ気でよけろ」
「ぎゃああああっ」
「十代目がんばって!」
相変わらず危なっかしい遊びするなぁ。
「おーい、この花火、やってていーのかー?」
「あぁ」
ふふん、と笑って、赤ん坊は小さな車に乗ってツナを追いかけていった。
「よし獄寺、やろうぜ」
「はぁ!? なんで俺がお前なんかと」
「つれない事言うなって」
笑いながら花火を何本が手に取る。
と、そこではたと気がついた。
「火、ないな」
「おら」
声に引かれるように顔を上げると、すぐ横で火が灯った。
…………。
「なんだ、ソレ」
くく、と笑うと、獄寺は嫌そうにライターを消してしまった。
「いらないなら消すぞ」
「もう消してんじゃん」
「ウルセぇ」
とか言いつつも、もう一度火をつけてくれるあたり、やる気がないわけではないらしい。
……ヤル気は、わからないが。
「よっしゃ、この先に火ぃつけろ」
「命令すんな」
また笑ったら、また怒るんだろうなぁ。
かわいいんだけど、帰られたら元も子もない。
花火の先がゆらゆらと燃えて、そして飛び出すように火がついた。
「ほら、獄寺持って」
「だから命令すんなっ」
でもほら、ちゃんと受け取るし。
やっぱり笑いながら、獄寺の花火から他の花火へと火を移す。
パチパチと。
光る。
キレイな横顔。
「そそるねぇ」
「ん? 何か言ったか?」
「いんやぁ」
睦言はベッドの中で、なーんて。
「あはは」
さらに花火に火をつけて、女子メンバーにも渡しに行く。
ていうか、なんでこんなにメロメロなんかなぁ。
あれだ、猫みたいなもんか。
―――懐かない気まぐれが、いとおしい。
「……何ニヤけてんだよ、気持ち悪ィ」
いつの間にか緩んでいた口元を押さえると、獄寺があきれるように息を吐いた。
「どうせまた変なコト考えてたんだろ」
「変なコト?」
く、と自然と片方の口端がつり上がる。
「変なコトって? ソレ、してほしい?」
「な、言、テメっ」
獄寺は顔を真っ赤に染め上げて、勢いよく後ろに飛びさすった。
……本当、猫っぽいなぁ。
ったく、んな、かわいいことしてくれんなっての。
「獄寺エロいなぁ」
「〜〜〜〜っ殺ス」
「まぁまぁまぁ」
ひょいひょいと花火に火をつけて、ひょいひょいと手渡していく。
これだけ持たせば、危ないオモチャは出せないだろ。
ほんと、アレだけどうにかしてくれればなぁ。
「……これ、なんだ?」
「ん?」
見やった先には、細い細い紙巻きの花火。
「あぁ、それ、線香花火だよ」
きらり閃いた。
「獄寺、勝負しようぜ」
「勝負?」
「そう、勝負だ」
手持ちの花火が消えるのを待って、線香花火を一本だけ手に取る。
他のと比べれば勢いも豪華さもないけれど、勝負のできる花火といえばコレしかない。
「この花火はな、こう、」
火をつけて、極力揺らさないように注意しながら、
「下にできた玉を落とさないように、持ち続ける花火なんだ」
「ふん」
しばらくして、火の玉はポトリと落ちてしまった。
「で、先に落ちた方が負けっつうルール」
「……わかった」
じゃあ、と今度は一本ずつ手に取って、一緒に火をつける。
「勝負!」
ジジジ。ゆっくりと燃えて。
パチ。一度弾けたら。
パチパチ。どんどん広がって。
パチチパチ。
どうしてこんなに、見つめていたいと思ってしまうのだろう。
どうして―――
ポトリ、落ちてしまった。
「よっしゃ、俺の勝―――」
光の後の暗闇に紛れて。
一瞬呆けて、それから獄寺は慌てて口を押さえた。
「おま、な、なに、」
立ち上がって、いつの間にか戻っていたツナの所へ向かう。
「おい!」
呼び止められて、振り向いて、笑う。
だって、しかたないじゃないか。
「獄寺、おいしそうなんだもん」
花火は消えても、心に灯された火は、たぶんずっと消えない。
火を灯したのは―――
「ぶちのめす!!」
「あはは」
キミだから。