――苦い。
舌が痺れて。
喉が焼けて。
頭も
体も
ただ熱くて。
――あぁ、
目を覚ませば、ベッドの上。
消毒液の臭いのする白い部屋。
ここは――
「保健、室……」
そうだ、なんか調子悪くて。
もう部活始まったかな。
ぼんやりと時計を探していると、
「――で、――」
白いカーテンの向こうから、聞き慣れた声がした。
再び枕に頭を埋めながら、耳を澄ます。
「だから早くバンドエイドくれよ」
「その前に消毒だ間抜け」
「っしみるだろが!」
「特別に診てやってんだ文句言うな」
そういや、新しい保健医と知り合いなんだっけ。
確かイタリアにいたときからの。
「ったく、お綺麗な顔に傷作るなよ」
「んなの、女じゃねぇんだから」
「お前はもっと自分を大事にしろ」
……なんでかな、気分が悪い。
最近ずっと。
まるで――
寝返りをうつ。
と、思いのほか、スプリングが大きな音を軋ませた。
「誰かいんのか?」
一瞬で全身が緊張する。
いや、別に隠れてるってわけじゃないんだけど。
「……あぁ、そういや気分悪いって、アイツ、えーと野球の」
「山本か?」
思わず小さな笑いがこぼれてしまう。
野球=俺なんだ。
カーテンの開く音。
逆光の中にきらきらと銀。
「……悪い、起こしたか」
頬には大きな絆創膏。
また、花火でも振り回したんだろうか。
「いや、ちょうど起きたトコ」
「そか、風邪か?」
「熱はないと思うんだけどなぁ」
へらりと笑おうとして、頬の筋肉が固まった。
冷たい――華奢な手を通して――熱い。
「少し、熱いか?」
眩暈と吐き気。
一気に強く。
「……今、何時?」
「あ? もうすぐ5時――」
獄寺を押し退けて、ベッドから降りる。
「お、おい」
引き止めようとする手をかわして。
今度はうまく笑えた。
「帰って寝ることにする」
これ以上ここにいたらきっと。
吐いてしまいそうなのに。
並んで、廊下を歩く。
「何、一緒に帰ってくれるとか?」
「……下駄箱までだ」
「心配?」
下校時間はとっくに過ぎたようで、生徒の姿もまばらだった。
「十代目の心労がな」
きっぱりと。
その緑の瞳に映るのは。
他に誰も、いない。
「なぁ、獄寺さ」
「何だよ」
「俺のこと、嫌い?」
「当たり前だろが」
「そか」
いっそう強くなる吐き気。
前後不覚になりそうな眩暈。
うずく、熱。
「じゃあ――ごめん」
「っ!?」
舌先に痛みと痺れ。
喉を焼く赤い、鉄の。
――苦い。
自然と浮かんだのは、自嘲の笑み。
「ごめんな」
もう、吐き気は治まらない。
「俺は、獄寺のこと好きだ」
ほとんど逃げるように、その場をあとにする。
獄寺がどんな顔をしていたか、見ることなく。
いや、どんな顔をしていても、この感情は強くなるだけだから。
だからいっそ嫌われたままでもよかった。
あの綺麗な瞳に映れば。
その記憶に強く残れば。
何をしても。
深い傷跡としてでも。
まぁ、実際怪我したのはこっちだけど。
触れる指先に、まだ痺れる舌。
そこに残るのは――
「あま……」
中毒性の強い、味。