09 | Normal Communication






CAUTION!!!



この『 Normal Communication 』は 18禁小説 となっております。

なので、ここから先は

・実年齢・精神年齢が18歳未満
・男性同士の性的表現が苦手ていうか嫌い
・現実と非現実の違いがわからない

以上に当てはまる方は閲覧を遠慮してください。




18歳以上だしやおい大好き!という方は
このまま下にスクロールしてお進みくださいませ。













『 Normal Communication 』





「たまには普通のセックスするのもいいと思う」


 読書に没頭していたせいで、一瞬反応が遅れた。
 とりあえず突っ込むべき点は、
「誰がいつ普通じゃないセ……ックスを、した!?」
「縄とかは痕が残るし、複雑な体位は大変だしさ」
「無視すんな、つか一回はやったことあるみたいに話すな!」
 つい手元の本を投げつけてしまうが、残念なことに、角には当たらなかった。
「……俺はさ、ただ」
 山本はベッドに腰掛けていた獄寺の足元にちょこんと座り、大型犬を連想させるような瞳で見上げながら――
「獄寺が欲求不満にならないか心配なだけなんだよ」
「俺はお前の頭が腐ってないか心配だ」
 すぐさに冷静さが復活した。
 ていうか、くそ、いつもと同じテをくらいかけてどうする。
「とりあえず今日の予定としては、相互で一回、中出し一回、ぶっかけ一回の合計三か――」
「果てろ今すぐ死んでしまえ!」
 仕込んでいたボムを鈍器に代えて、思いっきりその頭を殴りつけた。
「いっ、ちょ、マジで痛い」
 部屋を焦がしたくないゆえの折衷案が意外と効いたらしい。
「自業自得だ!」
 そのボムをさらに投げつけて、獄寺は大きなため息を吐き出した。
 発情期かこの大型犬は。
 バカなのは年中だが。
 セッ……クスは、だっていつも、こう、自然な流れで、って何考えてんだよ!
「とにかく! 今日はしねぇ絶対し――」
「まぁ、たまには、な?」
 声が耳を掠めたかと思うと、瞳は味気ない天井を映していた。
 シーツの、石鹸の匂い。
 それと重なるように――山本の。
「や、めっ」
 首筋をたどる柔らかい熱。
「ここ、弱いのな」
 笑う声。
 ぞくりと。
 脳髄に直接覚え込まされた、快感。
「あと、ここと……ここも」
 武骨な指が布の上から、胸の先と足の付け根を軽く触れて、過ぎる。
「んっ」
 律儀にこぼれる声が憎らしい。
 それ以上に、山本の表情が、
「お前の、せいだろが……」
 憎らしいほど甘いから。
 獄寺は腕を伸ばすと、ぎゅっと山本の頭を抱きしめた。
 胸の中で、笑う気配。
「責任は取るよ」
「ったりめぇだ」
 どうしようもなく好きなのは、お互い様で。



 キスを絡めて、鼓動を重ねる。
「……はっ、あ」
 熱は触れた場所から神経へ伝い、脊椎から全身を冒して。
 ――怖い。
 その感情は何度交わろうと変わらない。
「獄寺、舐めて」
 言われて、おずおずと舌を伸ばす。
 初めてじゃないのに、うぶな反応しか返せないのを、山本はむしろ楽しんでいるようで。
 山本は獄寺と同じように、それ以上に慣れた感じで舌を這わせた。
 快楽を、与え合う。
「んっ……ふ、あ!」
 敏感な場所に細い侵入物。
「きゅ、にすんな! 噛むぞ!」
「怖いこと言うなよー」
「てめぇが悪、ひぁっ」
 器用に動く指は前立腺を、いとも簡単に探り当てた。
 性急な刺激が。
「や、ぅあ、……んっ!」
「いっ」
 短いうめき声。
 どうやら、果てる瞬間にうっかり山本自身を握りしめてしまったらしい。
「あー…………」
 常なら男として共感できる痛みだが、今の獄寺にその余裕はない。
 獄寺は鼓動がおさまるのを待ちながら身を起こした。
 シーツに顔を埋めている山本を見遣って、どうしたものか考える。
 痛む場所を撫でてやる、という治癒方法も、こんな場合はどうだろうか。
 とりあえず、
「………………………すまねぇ」
 謝っておいた。
 勃たなくなったらなったで、あぁ、別にいいか楽で。
「今、不穏なこと考えたろー」
「別に」
「ひでー」
 獄寺は、山本と同じ向きに寝転がると、少し逡巡しながらも、そのうなじにそっと唇を押しつけた。
 驚いたように起き上がった頭を捕まえて、今度は絡め合うキス。
 細く、糸。
「……治ったかよ」
「治った。元気なった。なったから」
 獄寺の上に覆いかぶさって、
「続き、な?」
 山本はついばむようにキスを落とした。
 何度も。場所を変えて。
 時折赤い痕を残してゆく。
「入れてい?」
「……聞くな馬鹿」
「うん」
 さっきの比じゃない、圧迫感。
 あきらかに異物なのに。
「んっ……ぅん……」
「息詰めないで、吐いて、ほら」
「あ、はぁっ……あっ」
 早く、早くと気持ちだけが急いて。
 ひとつに。
 なれそうな気がするんだ。
「いっ……あ、んん……」
 舌先に濡れた音。
 胸の早鐘の、そのリズムと似た律動。
「な、隼人、キモチいい?」
「っき、くな、あっ」
 体に満ちていく。
 怖いと、それだけが。
 溢れそう。
「も……や、ぃあっ」
 山本は空を切る腕を背中に導いてやると、獄寺の耳元に囁いた。
「イキたい?」
「ん、むり、も、やまもとぉ!」
 ぎゅうとしがみつく。
「一緒に、イこうな?」
 動きが徐々に速くなり、最後に深く、奥まで貫かれた瞬間――
「ひあぁんっ!」
 熱い、電流に似た感覚が走り抜け、目の前が真っ白になった。


 止めていた息を吐き出し、強張った体から力が抜けるのに任せて、シーツの上に腕を落とす。
「はぁ……」
「疲れた?」
「ちょい……」
「もっかいいけそう?」
「…………………は?」
 ふと、脳裏をよぎる過去のセリフ。
 ――相互で一回、中出し一回、ぶっかけ……
「い――っ!」
 拒否の言葉を口にする前に、すでに山本は動き出していた。
「やめ、や、あぁっ」
「イった後って感度いいのなー」
「ばっ、あ、やあっ」
 暴れようにも、快楽に支配された体はただ反応を返すことしかできず。
 声が、抑えられない。
「あ、やっ、あぁ、んっ」
 途切れ途切れに、絶え間なく。
 額に、首に、胸に、落ちるキスも敏感にするだけで、一切に猶予を与えてはくれない。
 呼吸が浅くなって、頭がくらくらする。
「むり、んっ、たけ、しぃ!」
「あ、やっと名前で、呼んでくれた」
「よゆ、ぶんな、あっ」
「そ、かな?」
 深く深く舌を絡めて、山本は苦笑いに表情を歪めた。
「結構ギリギリ、なんだぜ?」
「んっ、ぬ、かせ、はぁっ」
「ホントだって。いつも……」
「も、だめ、早く、武、はやくっ」
「うん、俺も」
 狂ってしまいそう。
 もう壊れているのかも。
 だって怖い。
 このまま、ひとつにはなれないことが――
「や、あぁっ!」
「くっ」
 充足感と喪失感。


 ぱたぱたと白濁が降りかかる音。
 山本は指先で落ちかかるそれをすくい取ると、荒い呼吸を繰り返す獄寺の唇と舌に塗りつけた。
 ゆっくりと嚥下して、息ひとつ。
「……に、がい」
 でもなぜか甘ったるい感じ。
「お気に召さない?」
「……別に」
 結局味なんて関係ない。
 喉に引っかかるような気持ち悪さも。
 それが、たぶんこのどうしようもない気持ちの正体で。
 ベッドが少し揺れて、真横に気配が移動する。
「あ、そういや、今日はまだ言ってなかったけ」
「何を」
 あまり動く気もおきなかったので、視線だけ動かして山本を見遣る。
 山本は満足そうに微笑んでいた。
「大好き」
「っ!?」
 一瞬で顔が熱くなる。
 触れ合っているときとはまた違う。
 獄寺は浮かぶ言葉が全部喉で萎えていくのを感じながら、
「……果てろ」
 たったひとつ小さな呟きをこぼして、キスを受け入れた。



 この恋愛が普通か普通じゃないかの判断はつかないけれど。
 幸せなら。
 それを感じることができるなら。
 普通じゃない恋愛でも、いいかもしれない。



「――で、結局、普通のセックスはどうだった?」
「三回連続のどこが普通だ馬鹿野郎!」



 ……たまに、不安に感じることはあっても。






× × ×

久々のR18小説ということで、ちょっとばかり加減を忘れていますが
いかがだったでしょうか。
今回は隠語・淫語を極力避けたので、エロさが足りなかったかもしれませんね。
直接的表現は少々苦手なもので……(汗
その分、愛☆を感じていただければ、幸い(笑

しかし、ウチの獄寺、本当に「好き」の単語を知りませんね。
あと山本は発言だけでR18指定確実。