10 | 丸 一日





『 丸 一日 』





 ――何気なく、


 壁のカレンダーを見ると、明日の所に丸がついていた。
 考える。
 ……記念日? 何の。
 誰の誕生日でもない。
 予定もなかったはず。
 考えても答えがないなら。

 背もたれに向かって、問う。
「明日って何かあったか?」
 もたれていた背が振り向いて、答える。
「何もないはずだけど? なんで?」
「カレンダーに丸ついてる」
「あぁ、あれなー」
 山本は晴れやかに告げた。
「願掛け、みたいな。ほら、『丸一日』一緒にいられますよーにって」

 冷気。

「しょーもね………」
 がっくりと背中を丸めると、大きな犬がのっかかってきた。
「獄寺?」
「……願なんかかけなくても、充分だろが」
「ま、そうなんだけどさ」
 首筋に音をたててキス。
「そんだけ愛してるってコト」
「――っ果てろ!」


 何気ない。
 でも、それが幸せというもの。