18 | 仲良きことは





『 仲良きことは 』





 山本がおかしい。
 今朝からずっと獄寺くんの背中にへばりついている。
 授業中はさすがに離れてたけど、休み時間になると、やっぱりへばりついていた。
 お昼休みに、屋上でご飯を食べながら、獄寺くんに聞いてみると、
「十代目の気を煩わすほどのことじゃありませんよ」
 と笑って言った。
 いや、すごく気になるんだけど。
 その間も山本は会話に参加せずに、やっぱりずっと獄寺くんの背中にへばりついていた。


 まるで、ぐずった赤ちゃんをあやしてるような。
 背負って、揺らして、怖いことなんかないよと言って。


 放課後さすがにもうほっとけないと思って、獄寺くんに聞いてみると、
「本当に、どうでもいいことっスよ?」
 そう前置きして、話してくれた。


 今朝、家を出てすぐ山本がしがみついてきたらしい。
 もちろん引き離そうと思ったけれど、何か雰囲気がおかしいと感じて、そのままにしていたとのこと。
 少しずつ聞き出したところによると――
「怖い夢を、見たらしいです」
 少しだけ、山本が反応したように見えた。
「で、その夢ってのが、俺が死ぬ夢だったらしくて」
 ぎゅうと、抱きしめる山本を、獄寺くんは優しく叩きながら。
「勝手に殺すなって感じですけど、まあ、俺もわからなくはないっていうか……」


 あぁ、なるほど。
「獄寺くん、優しいね」
「えっ」
「うん、そっか。優しいんだね」
 いつも山本を邪険にするのは、好きの裏返し。裏返してしまうのは、相手がそれを受け入れてくれると知っているから。
 でも、裏返しちゃいけないタイミングも心得ているから。
「山本が離れないのも、なんかわかっちゃったなぁ」
「じゅ、十代目?」
 焦った様子の獄寺くんの向こうで、山本が小さく笑うのが見えた。
 半日かけて、ようやく立ち直ってきたらしい。
 もちろん、獄寺くんはまだ気づいてない。
「じゃあ俺、先に帰るね」
「そんな、家までお送りします!」
「いいよ。獄寺くんは山本についててあげて」
 実際引っ付いてるのは一方的に山本だけど。
 ていうか本当に周りの目を気にしない二人だなぁ。


「じゃあね、また明日」
 教室を出る途中でちらと振り返ると、こっそりと山本が手を振っていた。
 苦笑しながらも、小さく手を振り返す。
 悪い夢ってのは本当なんだろうけど、たぶんそれも口実なんだろうな。
 だって今日一日、誰も二人に近づかなかったし。
 結局、独り占めしたい、てことだよね。
「ケンカするよりはいいんだけど」
 ため息ひとつ。
 仲良きことは――



 たまに、うっとうしい。






× × ×

隣にバカップル、後ろにヘンタイ。
校門抜けてすぐにツナも抱きつき被害に遭うようです。(笑)
ツナ逃げて!!