ドラマみたいに。
マンガみたいに。
落ちた瞬間、気づくもんだと思ってた。
なのに――
一人増えた状況にも慣れ、三人でいるのが日常になった。
放課後には一緒に帰って、休みの日には一緒に遊ぶ。
最近流行りなのか、マフィアごっこをすることが多くて。
野球とは違う感じ。
この面子でいることが、すごく楽しい。
一人増えただけなのに。
「ツナ、帰ろうぜ」
「うん」
「獄寺は?」
いつもならこのタイミングで突っかかってくるのに。
「なんか用事があるとかで、先に帰ったよ」
「そっか……」
肩と一緒に気分が落ちた気がした。
「どうしたの?」
「ん?」
「なんか、がっかりしたように、見えたから」
「がっかり?」
――なるほど。
理由はわからないが、納得できた。
この感覚が、物足りなさってやつか。
たった一人いないだけなのに。
ふと、ツナが笑い声をこぼした。
「山本って、獄寺くんのこと好きだよね」
「そっかな」
まぁ確かにおもしろいとは思ってるけど。
今まで、あんな風に、誰かにケンカ売られまくった経験がないからだろうか。
嫌われてるとわかっていても、なんでか構いたくなる。
こっちを向いてほしくて。
「ん?」
――とくん。
「んん?」
「山本?」
なんだこれ。
どういうことだこれは。
「……たとえば、なんだけど」
「うん?」
「振り向いてほしくて、何かしたくなるのは、どういうことだと思う?」
「……好きってことじゃない?」
「うわっ」
心臓が跳ねた。
連続して、高鳴り続ける。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
好きという言葉に反応して。
どくんどくんと。
激しく訴え続ける。
「そっか……」
苦しいのと嬉しいのと。
「そういうことか」
耐えられずしゃがみ込むと、笑いたい気持ちがこみ上げてきた。
ドラマチックでも劇的でも何でもない。
気づかない内に落ちていた。
たぶん一目見たその瞬間から。
この気持ちは育っていたんだ。
「や、山本!?」
ツナの心配する声で、我に返る。
「ごめん、もう、大丈夫な」
鼓動はまだおさまってないけど。
立ち上がってツナの頭を軽く叩く。
「ホントに?」
「あはは。そんな心配することじゃねぇって」
明日顔を合わせたときにどうなるかはわからないけど。
この心臓が耐え切れるかわからないけど。
「うん。大丈夫だ」
今の気持ちは悪いものじゃない。
「ありがとな」
「え、なんで?」
「ツナってやっぱすげーな」
笑いながら、歩き出す。
歩き出したら、気分がすっとした。
やっとわかった気持ちが、胸を熱くする。
それが気持ちいい。
「ちょ、山本!?」
「早く帰ろうぜ」
今日は早く寝よう。
それから、早く起きよう。
それから――
早く伝えたい。
恋をする
この気持ちを。