22 | 君に思う、君を想う





『 君に思う、君を想う 』





 きっかり夜十時に電話のベル。
 ディスプレイを見ながら、たっぷり五コール鳴らせたら。


「Pronto?」
『隼人? 俺だけど』
「何だよ」


 すぐに取らないのも返事が素っ気ないのも、つまらない意地。
 笑う気配を悟られないように、受話器は少し離して持つ。


『今日は特に何もなかったんだけど』
「そうかよ」
『あ、ツナとキャッチボールしたんだけどさ』


 毎晩繰り返す、他愛ない日常の会話。
 国際電話だって決して安くはないはずなのに。
 時間だって、向こうは朝の六時ぐらいだろうに。


「俺がいなくても大丈夫そうだな」
『いや、もう結構限界』
「何か問題でも起きたのか?」
『俺がさみしい』
「なっ――」


 まだ一週間も経ってないのに。
 一週間だけなのに。
 たった一週間で戻れるのに。


『会いたい。抱きしめたい。なぁ、早く、帰ってこいよ』


 音のひとつひとつが胸の中で溶けて。
 じわりと広がって満ちる。
 届かない手の代わりに、せめて見えない耳元に唇を寄せて。


「……愛してる」
『うん。俺も、愛してる……』


 キスも届けばいいのに。
 きっと同じことをしてる。
 受話器を挟んで。
 衛星さえ利用して。
 同じ気持ちを伝え合う。


 さみしい。
 会いたい。
 愛してる。


 すべては君に思う気持ち。
 君を想う気持ちがすべて。






× × ×

しんみりほんわか十年後の完熟ラブ。
十年経てば余裕で下の名前呼びでしょうよ。

平和な十年後を妄想するのが楽しくなってきました。