きっかり夜十時に電話のベル。
ディスプレイを見ながら、たっぷり五コール鳴らせたら。
「Pronto?」
『隼人? 俺だけど』
「何だよ」
すぐに取らないのも返事が素っ気ないのも、つまらない意地。
笑う気配を悟られないように、受話器は少し離して持つ。
『今日は特に何もなかったんだけど』
「そうかよ」
『あ、ツナとキャッチボールしたんだけどさ』
毎晩繰り返す、他愛ない日常の会話。
国際電話だって決して安くはないはずなのに。
時間だって、向こうは朝の六時ぐらいだろうに。
「俺がいなくても大丈夫そうだな」
『いや、もう結構限界』
「何か問題でも起きたのか?」
『俺がさみしい』
「なっ――」
まだ一週間も経ってないのに。
一週間だけなのに。
たった一週間で戻れるのに。
『会いたい。抱きしめたい。なぁ、早く、帰ってこいよ』
音のひとつひとつが胸の中で溶けて。
じわりと広がって満ちる。
届かない手の代わりに、せめて見えない耳元に唇を寄せて。
「……愛してる」
『うん。俺も、愛してる……』
キスも届けばいいのに。
きっと同じことをしてる。
受話器を挟んで。
衛星さえ利用して。
同じ気持ちを伝え合う。
さみしい。
会いたい。
愛してる。
すべては君に思う気持ち。
君を想う気持ちがすべて。