23 | Bitter to Sweet?





『 Bitter to Sweet? 』





 手を伸ばして煙草を探す。
 灰皿も一緒に引き寄せて、火をともす。
 細い煙をくゆらせていると、武が戻ってきた。
「あ、寝タバコ厳禁」
「起きてるだろうか」
 水の入ったグラスを受け取り、じゃれ合うようにキスを繰り返す。
 舌を絡めたところで、武は顔をしかめた。
「にが」
 しびれさせる煙草の味。
「それでもいいっつったのはお前だろ」
「そうだけどさ」
 スプリングが軋み、唇だけでなく首筋にもキスが落ちてくる。
「吸ったことないのに味覚えちゃったしな」
 何度も、赤い痕を辿るように。
「嫌か?」
「好きだよ」
「だったらいいじゃねぇか」
「そうな」
 笑い声がくすぐったく過ぎる。

 しばらく触れるだけの遊びを楽しんで。
「そろそろ風呂沸いたかな」
「ん」
 煙草をもみ消し、その指で枕元の箱からチョコレートをひとつつまめば。
「武」
「なに――」
 舌先に乗せて、長く深いキスに絡ませて。
 いつもよりずっと甘い。
 欠片が溶けて、消えてしまっても。
「……甘いなー」
「たまにはいいだろ」
「こういうの、前にもあったよな」
「……あぁ、あったな」

 たしか中学のときだったろうか。
 冬の、粉雪の、帰り道。
 まだキスにも慣れない頃。

 口に残る甘さを共有しながら、懐かしく思い出す。
「チョコレートって言えば、明日って」
 内心、舌打ちする。
 気づきやがったか。
「……バレンタインだな」
「なぁ、さっきのって」
 期待に満ちた瞳。
 何度、その目に負けたことか。
「……ふ、普通に渡すより、お前、喜ぶだろうがよ」
 バツ悪く眉根を寄せてベッドから降りると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
 肩口に顔をうずめて。
「うん、うん。すげぇ嬉しい」
「そうかよ」
「うん。ありがとな」
 これが恥ずかしいから、さりげなく、さっさと済ませようとしたのに。
 でも、まぁ――
「おら、風呂行くぞ風呂」
「おー」

 悪くはない、か。






× × ×

やまなしおちなしいみなし!
過去のSSを少しだけ踏まえていたり。
ここまでベタベタできるのはやっぱり十年後ならではですかね。
ちなみに事後です。すみません。