手を伸ばして煙草を探す。
灰皿も一緒に引き寄せて、火をともす。
細い煙をくゆらせていると、武が戻ってきた。
「あ、寝タバコ厳禁」
「起きてるだろうか」
水の入ったグラスを受け取り、じゃれ合うようにキスを繰り返す。
舌を絡めたところで、武は顔をしかめた。
「にが」
しびれさせる煙草の味。
「それでもいいっつったのはお前だろ」
「そうだけどさ」
スプリングが軋み、唇だけでなく首筋にもキスが落ちてくる。
「吸ったことないのに味覚えちゃったしな」
何度も、赤い痕を辿るように。
「嫌か?」
「好きだよ」
「だったらいいじゃねぇか」
「そうな」
笑い声がくすぐったく過ぎる。
しばらく触れるだけの遊びを楽しんで。
「そろそろ風呂沸いたかな」
「ん」
煙草をもみ消し、その指で枕元の箱からチョコレートをひとつつまめば。
「武」
「なに――」
舌先に乗せて、長く深いキスに絡ませて。
いつもよりずっと甘い。
欠片が溶けて、消えてしまっても。
「……甘いなー」
「たまにはいいだろ」
「こういうの、前にもあったよな」
「……あぁ、あったな」
たしか中学のときだったろうか。
冬の、粉雪の、帰り道。
まだキスにも慣れない頃。
口に残る甘さを共有しながら、懐かしく思い出す。
「チョコレートって言えば、明日って」
内心、舌打ちする。
気づきやがったか。
「……バレンタインだな」
「なぁ、さっきのって」
期待に満ちた瞳。
何度、その目に負けたことか。
「……ふ、普通に渡すより、お前、喜ぶだろうがよ」
バツ悪く眉根を寄せてベッドから降りると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
肩口に顔をうずめて。
「うん、うん。すげぇ嬉しい」
「そうかよ」
「うん。ありがとな」
これが恥ずかしいから、さりげなく、さっさと済ませようとしたのに。
でも、まぁ――
「おら、風呂行くぞ風呂」
「おー」
悪くはない、か。