『 理由があるとすれば、そういう季節だから。 』
外は雨。
室内は湿気。
どうせ出歩く奴なんていない。
気晴らしに選ぶなら。
傘を手に取って。
嵐には程遠い。
穏やかな雨音。
風もない。
すれ違う人も。
いないはずなのに。
水に煙る道の先。
見慣れた傘。
それと、
「どっか行く途中?」
「……別に」
「わらび餅買ってきたから一緒に食わね?」
「……どこで」
「あー、どっち行くのも同じくらいだなー」
「……面倒クセェ」
「じゃあ俺ん家な」
傘が触れて。
雫が散る。
いつもよりゆっくり。
隣を歩く。
雨を。
楽しみながら。
× × ×
会えそうな気がしたけど、会うとは思ってなかったり。
会いたいと思っていたけど、会おうとは思ってなかったり。
だから顔を見ると素っ気なくしてしまうという。かわいいじゃないか。