整髪剤やらアクセやら無造作に置かれた棚。
いくつか並んだ色とりどりの小瓶。
形は基本、扁平な瓶だが、たまにイルカや王冠のようなものもある。
中に入っているのは。
「この匂い好きかも」
ひとつひとつ鼻を近づけながら、山本が呟く。
「どれ」
「あ、名前もいいな」
「だから、どれだよ」
「サムライ」
濃い青色の瓶からは、清涼系の匂い。
確かに、山本には合いそうだ。
「今日つけてるのは……これだ」
今度は薄い紫色の瓶。
少し甘い、ムスク系。
「最近これお気に入りだよな」
「……なんでわかんだよ」
確かに、最近はよくその香水をつけてる。
つけてるが、はっきり匂いがわかるほど塗りつけてるわけじゃねぇ。
よっぽど近づかないと――
山本は犬のように耳元に鼻を寄せ。
動脈の上にキスを落とした。
「これも、好き」
低い声。
ぞくぞくと肌が粟立つ感覚。
「――そ、」
堪えられず、両手を突っぱねて押しのける。
「そんなに好きならくれてやるよ!」
「え、別にいらないし」
「なっ」
なんだよそれ。
どういう意味だよ。
疑問が顔に出ていたのか、山本は爽やかに、いやらしい笑みを浮かべて。
「獄寺からの移り香でいいのな」
そう言って。
明らかに下心を持って身体をすり寄せてきやがった。
「っテメェこのバカ果てろ!」
俺は思いっきり山本に拳をぶち当てた。