『 大事なモノには 「 腕一杯の愛情 」 を 』
何よりも大事な君に。
何度でも言うよ。
「はーやとっ」
「勝手に人の名前を伸ばすな!」
今日もストイックなスーツ姿。
ぎゅっと胸に抱きしめ、甘い匂いのする銀髪に唇を寄せる。
「ずっと書類とにらめっこだぜ? こうして隼人摂取しないと窒息しちまう」
「俺は酸素ボンベか何かか」
「あー落ち着くー」
「人の話を聞け!」
薄い胸板、細い腰、適度な身長差。
腕の中にすっぽり収まるサイズ。
このまま家に持ち帰りたい。
持って帰ってアレやコレやしたい。
「隼人ー大好きー」
「ばっ」
誰かに届けるはずの書類で頭を叩かれた。
音の割に痛くない。
愛ゆえに痛くも痒くもない。
「仕事しろ仕事!」
「キスしてくれたら戻るー」
「はぁあ!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
職場でキスを要求してくるとか、どんだけアホなんだこいつは。
こんな、誰が来るとも知れない場所で。
「いい加減離れろ!」
「愛してるのにー」
「果てろ!」
不満そうな顔。
黙ってりゃいい男なのに。
なんだってこんなにアホなんだか。
「テメェも一応守護者の一人なんだから、ふざけたマネしてねぇで、さっさと仕事しやがれ」
「うー」
前なら仕方なく手伝ってやってたが、いつまでもフォローや甘えが許される世界でもない。
たまにはこうして突き放さないと。
「……わかったよ」
しょんぼりとうなだれたまま、武は両腕をほどいた。
包むような熱がなくなる。
それはそれで、少しさみしくて。
俺は離れようとする腕を掴み、そのネクタイを引っ張って――
唇を、押しつけた。
「……後でそっち行くから、ちゃんと、終わらせとけよ」
「はやと……」
見る間に表情が明るくなってゆく。
かと思うと、再び抱きしめられた。
「こらテメっ」
「大好きー超愛してるーっ」
「果てろぉ!」
何度もできないけれど。
何よりも大事な君に。
『 大事なモノには 「 精一杯の愛情 」 を 』