ぼくには、ご主人さまがふたりいる。
ゲンミツに言えば、同じ人なんだけど。
大人のご主人さまと、小さいご主人さま。
さいしょにぼくを見つけてくれたのは、大人のご主人さま。
「どうしたのな?」
「ん、あぁ、いや、」
強くて。
かしこくて。
かっこよくて。
いっしょにいるのが、ほこらしくなるぐらい。
「匣が一個なくなっただけで、静かになんだなぁと、思ってよ」
「……あぁ、そっか。いないんだな」
「うるさくなくていいけどな」
でも、強がりで。
あと、本当はさびしんぼ。
いつもは、ぼくがそばにいてあげるんだけど。
そこはもう、手のとどかないばしょ。
「ンだよ、その目は」
「ん? いや、俺もさみしいなぁと」
「ばっ、誰も寂しいなんて……」
「うん、そうなのな」
急に、大人のご主人さまがいなくなって。
目をさまして会ったのは、同じだけど、ぜんぜんちがう、小さいご主人さま。
びっくりしてかみついたり、ひっかいたりしたら、すごく怒られた。
ぼくは悪くないのに。
だから、キライだった。
「十年前の俺らの所にいるんだよな」
「匣じゃなくて指輪そのものになったらしいぜ」
「ふぅん」
「どんな指輪だろうな」
「知るか」
弱くて。
短気で。
あんなの、ご主人さまじゃない。
ぜったい、なついてなんかやらないって、思ってた。
でも。
「仲良くしてんのかな」
「さぁな」
「俺の匣兵器、犬だったらしいぜ」
「はは、武らしいな」
「瓜と喧嘩してなきゃいいな」
「どうだか」
いっしょに戦って。
いっしょに強くなって。
いっしょに、いるうちに。
すごく、大好きになってた。
本当は、同じだから。
だから。
ごめんなさい。
「……泣いてる?」
「なっ、て、ねぇよ!」
「いたっ、殴ることねぇじゃん」
「うっせぇ!」
さびしい思いさせて。
そばにいてあげられなくて。
でもね。
「そういや、他の指輪はどこいったのな?」
「他の?」
「前に自慢してた黒いドクロの」
「あぁ、どっかしまってあんだろ」
「あの辺の戸棚かな」
あの戦いの中で、ぼくは知ったんだ。
そう。
時間は流れるもので。
願いは叶うもの。
ご主人さまはふたりだけど、同じなんだ。
ねぇ、ほら、気づいて。
ぼく、お別れなんてしてないよ。
「いや、俺のことだから、どうせこの辺に――」
だからちゃんと、見つけてね。
ぼくの、たったひとりの、ご主人さま。
『みょおん!』