43| 会えなくても、大好き





『 会えなくても、大好き 』





 ぼくには、ご主人さまがふたりいる。
 ゲンミツに言えば、同じ人なんだけど。
 大人のご主人さまと、小さいご主人さま。
 さいしょにぼくを見つけてくれたのは、大人のご主人さま。


「どうしたのな?」
「ん、あぁ、いや、」


 強くて。
 かしこくて。
 かっこよくて。
 いっしょにいるのが、ほこらしくなるぐらい。


「匣が一個なくなっただけで、静かになんだなぁと、思ってよ」
「……あぁ、そっか。いないんだな」
「うるさくなくていいけどな」


 でも、強がりで。
 あと、本当はさびしんぼ。
 いつもは、ぼくがそばにいてあげるんだけど。
 そこはもう、手のとどかないばしょ。


「ンだよ、その目は」
「ん? いや、俺もさみしいなぁと」
「ばっ、誰も寂しいなんて……」
「うん、そうなのな」


 急に、大人のご主人さまがいなくなって。
 目をさまして会ったのは、同じだけど、ぜんぜんちがう、小さいご主人さま。
 びっくりしてかみついたり、ひっかいたりしたら、すごく怒られた。
 ぼくは悪くないのに。
 だから、キライだった。


「十年前の俺らの所にいるんだよな」
「匣じゃなくて指輪そのものになったらしいぜ」
「ふぅん」
「どんな指輪だろうな」
「知るか」


 弱くて。
 短気で。
 あんなの、ご主人さまじゃない。
 ぜったい、なついてなんかやらないって、思ってた。
 でも。


「仲良くしてんのかな」
「さぁな」
「俺の匣兵器、犬だったらしいぜ」
「はは、武らしいな」
「瓜と喧嘩してなきゃいいな」
「どうだか」


 いっしょに戦って。
 いっしょに強くなって。
 いっしょに、いるうちに。
 すごく、大好きになってた。
 本当は、同じだから。
 だから。
 ごめんなさい。


「……泣いてる?」
「なっ、て、ねぇよ!」
「いたっ、殴ることねぇじゃん」
「うっせぇ!」


 さびしい思いさせて。
 そばにいてあげられなくて。
 でもね。


「そういや、他の指輪はどこいったのな?」
「他の?」
「前に自慢してた黒いドクロの」
「あぁ、どっかしまってあんだろ」
「あの辺の戸棚かな」


 あの戦いの中で、ぼくは知ったんだ。
 そう。
 時間は流れるもので。
 願いは叶うもの。
 ご主人さまはふたりだけど、同じなんだ。
 ねぇ、ほら、気づいて。
 ぼく、お別れなんてしてないよ。


「いや、俺のことだから、どうせこの辺に――」


 だからちゃんと、見つけてね。
 ぼくの、たったひとりの、ご主人さま。





『みょおん!』







× × ×

永遠のお別れじゃなくて、少し会えなくなっただけ。
瓜連れて帰ったのは嬉しいけど、十年後隼人が寂しがりそうだなぁと思い。
未来は変えられたけど、時間はちゃんと繋がってるよっていう。
それぐらいの希望はあってもいいんじゃないかな、と思うわけであります。