04-0 | にゃんこの瞳





『 にゃんこの瞳 』





『 受験 × ジンクス = 回避 ? 』





 花は困っていた。
 果てしなく困ってしまった。
 彼女は結構な動物好きだ。
 本当なら猫なんて拾っちゃってる場面だ。
 が、しかし、迷った。
 今日は高校入学試験本番日。
 正直、神サマ仏サマな気分だ。
 色々と悪いジンクスは避けて通りたい。
 が、しかし。
「……かわいい」
 小さな体で擦り寄ってくる子猫に、花は迷いに迷った。
 拾うか、否か。
 普段なら確実に拾う。拾わないでどうする。
 しかし……今回のは……
「黒」
 猫
 だ。
 かわいそうなことだが、不吉だ。
 受験日に不吉だ。
 けど、でも、しかし……
 手を伸ばして、子猫に触れようとして、止まる。
 触れば終わりだ。
 情が一瞬にして湧いてしまう。
 それに、これはノラ猫なのか。
 どこかの飼い猫?
 でも、飼い猫でこんな小さい子を外に出すことはないはず。
 それになんだか、お腹空かしてるようにも見えなくもない。
 今日は曇り。昼過ぎに崩れる悪天候だ。
 もしノラなら……
 死んじゃう!?
 花は勢いよく子猫を掴むと、そのままポケットに突っ込んで、駅まで走った。
 半泣き状態で。
「やっぱり、ほっとけないぃぃぃ!!」
 理性VS性分。
 3分間1ラウンド、性分のKO勝ち。

 かくして、小さな小さな黒猫は、動物屋敷こと香川家の住猫(じゅうにん)となった。