『 受験 × ジンクス = 回避 ? 』
花は困っていた。
果てしなく困ってしまった。
彼女は結構な動物好きだ。
本当なら猫なんて拾っちゃってる場面だ。
が、しかし、迷った。
今日は高校入学試験本番日。
正直、神サマ仏サマな気分だ。
色々と悪いジンクスは避けて通りたい。
が、しかし。
「……かわいい」
小さな体で擦り寄ってくる子猫に、花は迷いに迷った。
拾うか、否か。
普段なら確実に拾う。拾わないでどうする。
しかし……今回のは……
「黒」
猫
だ。
かわいそうなことだが、不吉だ。
受験日に不吉だ。
けど、でも、しかし……
手を伸ばして、子猫に触れようとして、止まる。
触れば終わりだ。
情が一瞬にして湧いてしまう。
それに、これはノラ猫なのか。
どこかの飼い猫?
でも、飼い猫でこんな小さい子を外に出すことはないはず。
それになんだか、お腹空かしてるようにも見えなくもない。
今日は曇り。昼過ぎに崩れる悪天候だ。
もしノラなら……
死んじゃう!?
花は勢いよく子猫を掴むと、そのままポケットに突っ込んで、駅まで走った。
半泣き状態で。
「やっぱり、ほっとけないぃぃぃ!!」
理性VS性分。
3分間1ラウンド、性分のKO勝ち。
かくして、小さな小さな黒猫は、動物屋敷こと香川家の住猫(じゅうにん)となった。