04-1 | にゃんこの瞳





『 にゃんこの瞳 』





『 黒 + 黒 = 黄色いリボン 』





 ボクの名前はリリ。
 この前、自分が真っ黒なことを知った。
 ボクのまねっこをするヤツがいるから威嚇したら、キッカお姉さんが言ったのだ。
「それは鏡で、そこにいるのはあなたよ」
 なんでも、鏡というのは自分とそっくりな姿を映すらしい。
 不思議だ。
 鏡の中のボクは真っ黒で、どこまでも真っ黒だった。
 昨日、嫌いな水できれいにされた毛並みも、ボクを見つめる目も、どこもどこまでも真っ黒だった。
 キッカお姉さんは真っ白でも、目は緑色なのに。
 どこか、黒くない所はないのかな。
 うろうろと歩きながら確かめたけど、見つからない。
 そういえば、トラおばさんの足の裏はピンク色だった。
 ボクのは……やっぱり黒い。
「鏡がお気に入りね」
 キッカお姉さんが優しくボクの頭を舐める。
「黒くない所探してるんだ」
 そうだ、背中はどうだろう。
 尻尾の根っことか、頭の後ろとか。
 キッカお姉さんにお願いして見てもらう。
「うーん、見つからないわねぇ」
 ついでに毛並みも整えてもらってすっきりしたけど、でも納得できなかった。
 八つ当たりに、鏡ヤロウにパンチ。
 爪をしまい忘れて、変な音がした。
 にゃ、と身を竦ませると、ひょいと拾い上げられた。
 花ちゃんだ。
「こら、鏡は引っかいちゃだめでしょ」
 花ちゃんはボクを拾って、ここに連れてきた人間だ。
 スズカさんは「ご主人さま」と呼んでいたけど、意味はまだわからない。
「リリに似合うリボン買ってきたのよ」
 テーブルの上に着地して、見上げる。
 なんだ、その長いのは。
 えい!
「こら、ちょっと、動かないで、ほら」
 くるりとそいつは首に巻きついて、きゅっとボクの首を絞めた。
 なんだよ、噛むぞこのっ!
 また拾い上げられて、鏡の前に降ろされる。
「ほら、よく似合ってる」
 首の後ろにちょうちょがとまっていた。
 ボクが動くとひらひら揺れる。
 なんだろう、嬉しいな。
「気に入った?」
 にゃあと一鳴き。

 ボクの黒くない所、お気に入りの黄色いリボン。