『 尻尾 × ちびすけ = 遊び相手 』
最近、俺の雄雄しい尻尾が危機にある。
そいつはいつも突然やって来る。
「やあ!」
黒い塊は物陰からこっそり、そして勢いよく飛び掛ってきた。
ひょいと揺らして避ける。
黒い塊は着地に失敗して、思い切りつんのめった。
……大丈夫か?
首だけで振り向くと、起き上がってまた襲い掛かってきた。
「とうっ」
ピンポイントで俺の尻尾に。
くるんと巻いてニ撃目も避ける。
今度は着地に成功して、黒い尻尾を揺らしながら狙いを定める。
「……おい」
ジャンプ。
ひょい。
べしゃ。
「楽しいか?」
黒い塊はむくと起き上がって、笑った。
「とっても!」
そして飽きもせずに再度飛び掛かってきた。
「リリったら、鈴鹿と遊んでもらってるの?」
近くを通ったご主人様がしゃがんで黒い塊を撫でる。
「うん!」
誰も遊んでやってなどいない!
「鈴鹿もリリと遊んでくれて、ありがとね」
今度は俺を撫でて、それから階段の方へと行ってしまった。
ご主人様に礼を言われてしまっては、これの面倒を放棄できないではないか。
「ていっ」
黒い塊は見送りもせずに俺の尻尾にじゃれていた。
ご主人様に対する礼儀は先日に教えたはずなのだが。
と、うっかり尻尾で小さい頭を叩いてしまう。
みぎゃ、と短い悲鳴。
「ぶ、無事か?」
起き上がって鼻先を近づけると、ぺろりと舐められた。
「もっとあそぼ!」
器用にも左右に跳ねる。
一口で食べてしまえるほど小さい黒い塊。
俺はふんと息を吐いて、べろりと舐め返した。
「きゃあぁ」
黒い塊は楽しそうに転がって、嬉しそうに笑った。
まぁ、ちびすけの相手も悪い気はしないがな。