04-3 | にゃんこの瞳





『 にゃんこの瞳 』





『 ちっちゃい → もっとちっちゃい = うれしいの 』





 見えない壁の向こうに、ちっちゃい何かが動いていた。
 この壁はひっかくと怒られるから、顔をくっつけてのぞくだけ。
 ちっちゃいのの、おっきいほうは知ってる。
 ネズミだ。
 この前まで太ってたネズミがやせて、もっとちっちゃい何かが現れた。
 それはもぞもぞと動いて、いつもネズミにまわりに集まっていた。
 なんだろう、アレなんだろう。
「リリ坊、どうしたんだい?」
 トラおばさんが下を通りかかった。
「ちっちゃいの見てるの! アレ何かなぁ?」
「小さいの? あぁ、子供が生まれたのかな?」
「コドモ?」
「リリ坊と同じってことさ」
 トラおばさんは笑うように鳴いて、行ってしまった。
 ボクと同じ?
 でも、ボクはあんなにちっちゃくない。
 スズカさんに比べれば、確かにちっちゃいかもだけど。
「リリ、どうしたの?」
 タンスの上から、キッカおねえさんが降りてきた。
「ちっちゃいの、ボクと同じだって、ちがうよねぇ?」
「小さい? あら、生まれたのね」
「生まれた?」
「とても大事なもの、愛おしいものよ。リリと同じね」
 そう言って、顔を舐めてくれた。
 気持ちよくて、目を細める。
「かわいい子、いい子ね」
 なんだか、嬉しくなる。
 ぽかぽかあったかい。
 そっか。
 あのちっちゃいのは、うれしいのカタマリなんだ。
「一緒に遊びましょうか」
「うん!」
 ふわふわの白い尾っぽを追っかけて、ひらり飛び降りる。

 いつか、うれしいのと一緒に遊べたらいいなぁ。