25-2 | 2x2=maniac






『 2x2=maniac 』








 水音に混ざって、扉の開く音がした。
 急いで駆け寄る足音と、悠然と踏みしめる足音。
 ぼんやりと向けた視界の中、湯気の向こうに見えた姿に、堪忍袋の緒が切れる。
「綱吉ぃぃぃ!!」
 本能のまま暴れようとした骸を背後からきつく抱きしめ、綱吉はその耳元に囁いた。
「ごめん、ごめんって」
 強引に膝で立たせ、振動にひくつく後口の縁を指でなぞる。
「でもさぁ、発案者はジョットだよ?」
「せ、責任転嫁はっ、ぁっ」
 蕩けた穴は容易に指を受け入れ、指先で器用にローターを挟んで上下に動かされた。
「こらっ、はなしなさっ、んぁあっ」
「やっぱりローターだけじゃ足りなかったかな、すっかりユルユルだ」
「ひぅっ、ぁあっ」
 早速始めた綱吉とは反対に、ジョットは落ち着いた様子でデイモンを膝の間に座らせ、後ろから優しく抱き寄せた。
 濡れて肌に張りつく髪を耳にかけてやり、そっと頬に口付ける。
「デイモン」
 けれど、デイモンは罵倒する言葉すらなく、黙って顔を背けた。
「デイモン、すまなかった」
 無視されたことも気にせず、ジョットはベビードールの裾から平らな胸へと手を這わせた。
 かすかな膨らみを揉みしだき、指先に引っかかった突起に爪を立てる。
「んっ!」
 痛く感じる一歩手前の強さで捏ねてくるのを、唇を噛んで、とにかく耐える。
「一度、お前たちの絡む様を見てみたかったのだ」
 吐息が耳朶から動脈を辿り、鎖骨へと落ちかかる。
 それでも無視を決め込んでいたのだけれど。
「利尿剤はノリだったが、しかし、なかなか興奮する光景だったぞ」
「――っ!」
 短く息を吸い込んで。
 デイモンは俯きつつあった頭を、一気に後ろへと跳ね上げた。
 鈍い、衝撃音。
 ジョットが額を手で押さえる一方で、デイモンは低く唸り声を響かせながら後頭部の激痛に耐えるように再び俯いてしまった。
 予想以上に石頭だったらしい。
 どちらかというと痛みに浮かんだ涙を目隠しに吸い込ませ、デイモンは涙声のまま怒鳴った。
「あ、あっ、あなたなんか、きらぃれすっ!」
「ひどいな」
「ひどっ、のは、おまえだぁあ!」
「とか言われたんだが、綱吉はどう思う」
「確かに、ひどい案だとは思ったかなぁ」
 笑って答えているが、その両手は休むことなく骸の両胸を揉み上げていた。
「綱吉っ、そこ、弱いからっ」
「うん、知ってる。可愛い」
 髪から滴る水滴を吸い取り、うなじにキスマークを刻みつける。
 綺麗に浮き上がった痕に対抗心が湧いたのか、ジョットもデイモンの唇をやや強引に奪い取った。
「んーっ!」
 逃げる舌に噛みつき、嬲り、唾液を交えてから、嘆息と共に解放する。
「ふ、ぁあ……」
 抵抗する力が抜けたのをいいことに、ジョットはさらに愛撫を進展させた。
「それでも、乗ってきた綱吉も同罪だと考えるが」
「まぁ、そこは認めるけど、俺の場合は」
「つ、綱吉、ねぇ、綱吉っ」
「なぁに? 骸」
 耳朶を甘く食んで問い返す。
 その刺激にも恍惚とした表情を浮かべ、骸は綱吉に頬をすり寄せて鼻にかかった声を出した。
「こんな、ローターより、綱吉の、綱吉の挿れて、ください」
「俺の、何を?」
「何って」
「言わないと、指で済ませるよ?」
「……おねだりは、可愛げのあるほうが、いいです?」
「骸はいつでも可愛いよ」
「馬鹿ですね、んっ」
 深く唇を重ね、朱を差したような目許を楽しげに細めて。
「……綱吉のおっきな肉棒、僕に、ぶち込んでください」
 骸は恥ずかしげもなくとんでもないおねだりの台詞を口にした。
 綱吉は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐに、ご褒美とばかりに濃厚なキスを交わした。
「斜め上のおねだりだったけど、いいよ、可愛いから挿れてあげる」
「んんっ、ひゃあっ」
 秘部から伸びるコードを引っ張って一気にローターを抜き取り、
「ぁあっ、あーっ!」
 後口が締まる隙すら与えず、怒張する自身で最奥まで貫いた。
「ふぁ……ぁっ、ん……ふかぃ……っ」
「いい声、興奮する」
 笑みに歪む唇を舌先で湿らせ、綱吉は震える腰を掴むと荒々しく挿抜を開始した。
「くぁあっ、あっ、もっと、もっとっ、綱吉ぃっ」
「ダーメ、痛くするとお前すぐイっちゃうだろ? もっと楽しませろよ」
「ゃっ、ん、ひぁあんっ」
 甘い甘い声は浴室によく響き渡って。


 外部からの情報を聴覚に頼るしかないデイモンは、とにかく混乱していた。
 よく知っている声は聴いたこともない音を奏でていて、シャワーの音に満たされていたはずの空間は卑猥な音に上書きされてしまった。
 一体、今、何が、どういう状況なのか。
 わからない不安と、恐怖とで、鼓動が落ち着かない。
「デイモン」
「ひぅっ!?」
 前触れもなく自身の先端を引っ掻かれ、思わず腰を跳ねさせてしまう。
「や、やめっ」
「骸の喘ぎ声で興奮したのか? 勃起している」
「違うっ、そんなこと、ないっ」
「本当か?」
 くすくすと意地悪い笑い声に重なって、耳元にリボンをほどく音が掠めた。
「――っ」
 急に明るくなった視界と、降りかかるシャワーの水滴に、思わず目を閉じてしまう。
 それから、ゆっくりと開けてみると、そこには――
「あっ……そこぉ、ぃっ……んぁあっ」
 表情を至福に蕩けさせて綱吉を受け入れる骸の、淫らに乱れる姿があった。
 青白い肌は紅く上気し、少し濁る体液を滴らせて揺れる骸自身を眼前に、知らず、喉を鳴らす。
 普段からどこか妖艶な雰囲気をまとっているけれど、それとは比にならない。
 薔薇よりもっと香りの高い、どこか食虫花に似た毒々しさを漂わせていて。
 ふと、骸は蒼色の瞳が露わになっていることに気がつくと、繋いだままの手を引いてデイモンに身を擦り寄せた。
 唇が触れそうなほどの近さで、色違いの目を笑みに細める。
「こうして、あっ、愛されるって、気持ちいっ、ですよね?」
「な、何を言って」
「貴方も素直にっ、受け入れればいい、愛情も、快楽もっ」
 驚く瞳を覗き込んだまま、ぺろりと唇を舐める。
「やっ――!?」
 慌てて身を引こうとしたけれど、すぐにジョットが背に覆い被さってきたせいで前へと押し戻されてしまう。
 さらにジョットは、唾液をまとわせた指を下着の隙間から小さな後口にあてがった。
 そちらに気を取られた一瞬の隙。
「んぅうっ!」
 かぶりつくように口を塞がれてしまった。
 強引に歯列を割って舌を絡ませ、何度も角度を変えて咬みついてくる。
「あは、百合プレイ見てるみたい」
 やはり楽しそうに笑って、綱吉は深く貫いた状態で挿抜の動きを止め、そのまま骸の腰をデイモンへと近付けた。
「こっちも、ちゅー」
 骸の逸物を掴んで、デイモンのモノに先端を擦りつけさせる。
「んんーっ!?」
「んっ、ふぁっ」
「さっきも、こうやって擦りつけてイったの?」
 片手で二人分まとめて握りしめ、もう片方の手でそれぞれの先端へと爪を立てる。
「こういうの、なんて言うんだっけ」
「兜合わせだな」
「あ、それそれ、気持ちいい?」
 デイモンの口を塞いだまま、骸は肯定するように隙間から笑い声を漏らした。
 最愛の恋人が年下二人に言いようにされているのを悦に眺める一方で、ジョットは後口をほぐす指を二本に増やした。
 さらに背中に舌を這わせながら、乳首の方へも指を絡ませる。
「比べてみると、骸の方が大きいかなぁ。その下着、脱がせていい?」
「ずらすだけなら許す」
「こだわり?」
「脱がせては可哀そうだろう?」
「あー、はいはい」
 綱吉は呆れた様子で頷き、指先に引っかけた下着を睾丸の手前までずり下ろした。
 ついでに下着越しに睾丸を軽く揉んでやる。
「んゃうっ!?」
「綱吉」
「あれ? ダメ?」
「いや、それをするとすぐイってしまう」
「なるほど。じゃあ、おあずけだね」
 素直に手を離して、今度は先端の位置を合わせて握り直し、根元までの長さを覗き込む。
「……骸のほうが、ちょっとだけ長いかな」
 どれどれとジョットも覗き込み、吐息で笑う。
「しかし、デイモンの方は形が可愛いだろう」
「それを言ったら骸だって、ほら、こことか」
「デイモンも、見ろ、ここの筋の浮き方など」
「骸はこの、カリの部分とか特に」
「デイモンは色も、味もよくて」
「骸の方が」
「デイモンの方が」
「「お前ら下品な争いはやめろ!」」
 さすがの骸も耐えられなかったのか、一音一句綺麗に重なり合った見事なユニゾンを奏でてみせた。
 しかし、対するジョットは意味がわからないといった表情で、平然と告げた。
「下品なものか」
 そうそう、とさらに綱吉が追い打ちをかける。
「全部愛してるから、自慢したいだけだよ」
 だって骸が一番可愛いから、とこれは骸にだけ聞こえるように耳元でそっと告げる。
 ぞくぞくと、耳朶から浸透する熱に打ち震わせて、骸は視線だけで振り返った。
「どうしたの? 動いてほしい?」
 笑んだまま頷き、再びデイモンへと視線を戻して間近に寄せた唇で問いかける。
「もっと素直に言えば、いいじゃないですか、彼らは甘えた言葉に、一番、弱いのだから」
「あ、甘えた、ことば……?」
 ちらりと目の端でジョットを捉える。
 ジョットはすぐに気がつき、微笑んで小首を傾げた。
「あ、――」
「ひぁあっ、んぁっ、つなよしぃっ」
「ひぇっ!?」
 唐突に骸が喘ぎ出したことに驚いて視線を向けると、綱吉が律動を再開させており、激しく肌をぶつける音が再び響き始めていた。
 あんなモノで攻め立てられて、苦しそうなのに、痛そうなのに。
 なのにどこか、嬉しそうで、気持ちよさそうで。
 ――幸せそうで。
 目の前の淫猥な光景に、そう、場の雰囲気に酔わされてしまったのかもしれない。
 デイモンはわずかに俯き、背後のジョットに軽くもたれかかった。
「……わたしも、ジョットが……ほしい、です」
 骸が幸せそうだから。
 言葉そのままに愛される骸が、羨ましかったから。
 だから精一杯に紡ぎ出した、懇願の言葉だったのだけれど。
「骸のように求めてはくれないのか?」
「え?」
 ジョットは他の求め方がよかったらしく、デイモンを腕の中に抱き留めて次の言葉を待つだけだった。
「ん、んー……」
 そうは言われても、骸がどのように綱吉を求めたのか、実際目にしていなかったからわかるわけがない。
 どんな言葉を口にしたのかも、よく覚えてはいない。
 困惑のまま黙りかけた耳元に、ふと、骸が何かを囁きかけ、静かに微笑んだ。
 まるで蛇の誘惑のようだと、様子を見ていたジョットは思う。
 デイモンに差し出されたのは果たして罪の果実か。
 やがて、デイモンは意を決したように短く息を吸い込むと、ゆっくりと涙に濡れた瞳をジョットに向け、震える声で求めた。
「……ジョットの、に、ニクボウ? で……おかして……っ!?」
 脳内が閃光と共にショートするような感覚。
 次の瞬間には、
「んゃあああぁっ!?」
 ジョットは深々とデイモンを貫いていた。
 さらに一息置く間も与えず、激しい突き上げを繰り返す。
「あっ、やぁっ、くるひぃっ、ジぉっ」
 喉を反らせ、身をしならせて。
 喘ぐ呼吸はふたつ、よっつ。
「つなよし、もぉ、イって、いいですっ?」
「えー、どうしよっかなぁ、いや俺もイきたいけど、ね?」
 デイモンと骸が気付かないところで、綱吉はそっとジョットに目配せした。
 ジョットも応えるように頷くと、デイモンの両脚を持ち上げながら仰向けに身を倒した。
「ぁっ、ひぁあっ」
「うぁっ!」
 両手同士を繋いでいるせいで、骸まで倒れそうになってしまう。
 綱吉に抱きしめられていたおかげで少し前のめりになるだけで済んだけれど、視線を落とした先では、繊細なレースの隙間からふたりの結合部分も丸見えであった。
 グロテスクな逸物を咥え込んで真っ赤にひくつく後口を目にして、知らず、骸は興奮をため息に混ぜて吐き出した。
「そろそろ、骸も自分で動きたいよね?」
 丁寧に骸の左手の拘束を解き、デイモンの右手と共に自由にしてやる。
 綱吉はピアスの留め具を舌先でなぞり、甘く囁いた。
「シたいように、シていいよ……?」
 自分よりもこっちの方がずっと、蛇の誘惑と言えそうだ。
 骸は一度綱吉に頬をすり寄せてから、先ほどと同じ体位でデイモンの上に覆い被さった。
 男にしては柔らかく感じる太腿を撫で、互いのモノを重ねて握り込む。
 そこでようやっと状況を把握したデイモンは、慌てて自由な方の手で骸の肩を押しやろうとしたが、
「やっ、だめぇっ!?」
 ジョットがわざと前立腺を掠めたせいで気が逸れ、その隙に熟れた乳首へと噛みつかれた。
「んぁっ、む、むくろっ、はなひてっ」
「嫌ですよ、こんな楽しいこと、やめることが勿体ない」
「ぃたぁっ、やっ、かまにゃっ、でぇ!」
「骸と同じで、痛い方が好きなのかな」
「まぁ多少はな。傷が残らない程度に留めろよ?」
「クフフ、わかっていますよ」
「ゃっ、あっ、やめろっ!」
 首を振って、涙を散らせて拒絶するも、デイモン以外の全員が乗り気で一切言うことを聞こうとしない。
「だめっ、こんなの、だめぅ、んんぅっ」
 それでも抵抗しようとすると、呼吸と声を奪われた。
 確かにジョットに抱かれていて、この身もジョットにしか許していないはずなのに。
 視界には骸しか入っていないせいで、その律動に、熱に、錯覚しそうになる。
 まるで――骸に犯されている――と。
「――ぃ、ぃや、いやぁっ!」
「ほんとに、嗜虐心をそそる、反応ですねっ」
「ジぉっ、ジョットぉっ、やらぁっ」
 互いの昂ぶりをまとめて扱く手の動きは、徐々にその速度を上げて。
 骸の呼吸からラストスパートなのだと察せられて。
「ゃっ、ゃっ、ぁっ」
 イきたくない、イかされたくない。
「ジョットが、ゃあっ、ジョットがイぃっ――!!」
 せめて我慢しようとした抵抗もむなしく。
 最後に先端を強く擦られた瞬間、二筋の白濁が放たれていた。


 ぐったりと身を重ねる二人を愛おしく思いながら、綱吉は強く引っ張ってしまわないよう注意して、もう片方の手首の拘束も解いてやった。そして、やっとデイモンと離れた骸を抱き寄せ、恭しげに首輪の金具も外してしまう。
 その光景を見るともなしに眺めつつ、デイモンは白濁を拭うように白い腹部へと手を這わせた。
 自分のものと、骸のものと、あと骸の後口から伝い落ちた綱吉の精液と。
 それぞれ粘り方が違うのを不思議なものだとぼんやり思う。
 白濁をまとった指先を脚の間へと伸ばしていくと、いまだ秘部は怒張したジョット自身に圧迫されていた。
 ただひとり、精を放つタイミングをうかがうように、強く脈動を伝えてくる。
 まだ満足していないと、訴える。
「……ジョット、降ろして、ください」
「まだ抜きたくない」
「抜け」
「うむ」
 刺すように伝わってくる冷たい怒気に即降参し、ジョットはデイモンごと横向きに転がってから自身を引き抜いた。
 その瞬間。
 デイモンは手を伸ばして床に落ちていた革ベルトを掴み取り。
 振り向きざまに。
 革ベルトで空気を裂いた。
「――っ」
 響く、皮膚を打つ音。
 デイモンは自分を支えることもできず、そのままシャワーの水流の中へと倒れ込んだ。
 蒼い髪とベビードールがしとどに濡れていく。
 突然の音と展開に驚く綱吉と骸を一瞥し、ジョットは熱く痛む頬に触れた。
 今まで平手で張られたことは何度もあったが、ベルトではあるものの、こうして鞭に打たれたのは初めてだ。
 よほど怒らせてしまったらしい。
「……デイモン」
 反応はない。
 腕を掴んでも抵抗しないので、ゆっくりと上体を起き上がらせて向かい合った状態で抱き寄せる。
 目許を隠す髪を唇でかき分け、赤く腫れた目許に口付ける。
「デイモン」
 こめかみから頬、頬から唇へ近付けると、舌先を伸ばして誘い入れられた。
 てっきり拒絶されるかと思っていたのだが、いつもと怒り方が違うのだろうか。
 疑問に思いつつも求められるまま深く呼吸を交わし合う。
 そうして唇を重ねている内に体力が回復してきたのか、デイモンは片腕を首に回してしがみつき、もう片方の手を伸ばしてジョットのモノに指を這わせた。
「まさか折るつもりじゃないだろうな?」
 軽い冗談に、軽い笑い声を返して腰を浮かせると。
「んっ、んぁあっ」
 一気に腰が落とされ、あてがわれた逸物が体内へと飲み込まれてしまった。
「デ、デイモンっ?」
「ひぁっ、ぁっ……んくぅ……っ」
 小刻みに震える身体を、きつく抱きついて落ち着かせる。
 滲んだ瞳で見下ろした先の顔は、ひどく間抜けな、驚いた表情をしていて。
 してやったりと笑う一方で、涙が込み上げてきて、デイモンは気がつくとジョットの唇に吸いついていた。
「ばか、ばかっ、ジぉっ、の、ばかものっ!」
 シャワーの水滴よりもずっと温かい雫が、次々とジョットの頬へと降り注ぐ。
「か、籠の鳥にされ、てもいいと、思っ、思いこそすれっ」
 ジョットの頬に浮かび上がった赤い痕を撫でて。
「こんなっ、み、見世物にっ、して、んっ、私は、わたしはっ」
 デイモンはきつく眉根を寄せた、情けない泣き顔で。
「だっ、抱かれたいと、心から望むのは、あ、貴方だけっ、ジョットにだけなっ――」
 最後まで告げることなく、とうとう、デイモンは子どものように大声で泣き出してしまった。
 みっともないと思いながらも、涙と声が止まらない。
 それほどまでに悔しかった。苦しかった。許せなかった。
 ジョットは何も言わずに、泣き続けるデイモンを腕の中に閉じ込めてその背を撫でてやった。
 さすがのジョットも反省したのだろうか、と骸は思ったのだけれど、デイモンの肩越しに口許を緩めたのを見つけた綱吉は、同情の念を隠しきれずにため息を吐き出した。
 あれはきっと、味をしめた顔だ。再犯の可能性は高い。
 現に、両手はすでにデイモンの腰を支えに回っていて、綱吉たちの存在などお構いなしに始める気満々であることがうかがい知れた。というか、存在を忘れてさえいるのかもしれない。
「デイモン、愛してるぞ」
「私も……んっ……まだ、動かないで」
「すまん、俺だけまだイってなくて、今かなりキツい」
「そう……でしたね」
「中に出していいか?」
「……んー……すぐ流して、くださいね?」
「心得た」
 座ったまま両脚を抱えるように腰へと腕を回し、ジョットはデイモンを上下に突き動かし始めた。
「待っ、ゃあっ、ジぉ、ん、ぅ、ふぁあっ」
「やはり、正面から抱いた方が、味わい甲斐がある、ものだなっ」
「はげしっ、ぃっ、ああぁっ」
 容赦ない責めにも、どこか充足感が満ちていく。
 舌が覚えた唾液の味も、重ねた胸から伝わってくる鼓動も、よくこの身に馴染んでいて。
「ジョット、ジョット愛してるっ」
 デイモンは泣きながらも、心から溢れる言葉を、音にした。


 その様子を視界の端に捉えつつ、骸は死角から綱吉を押し倒した。
「うわっ、ちょ、骸っ」
「たった一回で済ますはずがないでしょう?」
 脚を絡めてしなだれかかり、片手で緩やかに綱吉自身を扱き上げる。
「今度は僕が、愛してあげますね?」
 そう言って口端にキスを落とすと、短く笑って唇を奪われた。
「乗ってよ、早く」
「クフフ、せっかちですねぇ」
 手の中で固さを取り戻したのを感じ取り、そのまま綱吉の上に跨って後口へと導き入れる。
「く、ふぁあ……また、こんな、おっきくして」
「骸見てたら何回だって勃つかも」
「枯れますよ?」
 両手同士をしっかりと繋ぎ合せてから、骸は腰を揺らし始めた。
「んんっ、ぁっ、あぁっ」
「いいなぁ、動きからして、エロい」
「クハっ、ではもっと、魅了して、あげますっ」
「っぁ」
 抜くときにだけきつく締め付けてくるテクニックに、綱吉は思わず身を震わせた。
「すげ、ぅあっ……ぃっ……」
「綱吉かわいぃっ……くぅ、ふぁっ……あぁんっ」
 左右で色違い目を悦に細めて見下ろしてくる。
 その顔だけでも充分イケるかもと思いながら、綱吉も口許を歪めた。


 年下二人がじゃれ合う一方で、一度中に出したジョットはそのままデイモンを床に押し倒して二回目に突入していた。
「ジぉっ、も、むぃっ、ぬぃ、れぇっ」
「何を言うか。まだ一回、出しただけだろうっ」
「それぁっ、ひぅっ、あ、ジぉらけっ、んぁあっ」
 突かれる度に小刻みに身体を震わせ、先端が少量の精を少しずつ吐き出してしまう。
 先ほどの絶頂からずっと達した状態を維持してしまっているらしい。
 数えてみればデイモンは既に三回ほど射精しているし、さすがにそろそろ限界か。
「赤玉など、都市伝説だと、思うがなっ」
「ひぁあっ!?」
 奪い取ったリストバンドをデイモン自身の根元へ通し、その上から革ベルトできつく締めつけて精を堰き止める。
「ぃた、そぇっ、やらぁあっ」
「あと一回、我慢してくれ」
「ジぉ、ジョット、おねがぁいっ」
 両腕を伸ばして懇願してくる恋人の可愛らしさに、ジョットは一瞬眩暈すら感じてしまった。
 上体を屈めてその腕を首に絡めさせてやり、深く呼吸を絡ませ合う。
「可愛いな、デイモンっ、愛しているぞ」
 頬から首筋を辿り、届く限りの肌に赤い痕を刻みつける。
「うぅっ、き、きらいれふっ、もっ、ぃやっ」
「本当か? こんな、きつく締め、つけてっ、まだ言うのか?」
「ジぉがぁ、お、おっき、すぎるか、らぁっ」
「可愛いことをっ、言って、くれるっ」
「んやぁあっ!」
 こぼれ落ちる涙を舐め取り、水流になびく蒼髪を集めるようにして頭を撫でる。
 紅色に上気した目許に縁取られた蒼色の瞳の揺れる様は艶めかしく。
 ジョットは吐息に短く苦笑を混ぜ、さらに激しく、律動を速めた。
「やっ、あぁっ、はげしっ、ひぃ、んんっ」
「あと少し、もう少しだっ」
「らめっ、も、ぃけにゃっ、あっ、あっ」
 反らされた胸の赤い飾りに口付けつつ、一方的に腰を打ちつけて。
「ジぉっ、ジぉっとぉ!」
「デイモンっ、出すぞ、中に全部、出すっ」
 腰を抱き寄せて深く最奥まで抉ると同時に。
「―――っっ!!」
 掠れた悲鳴に喉を軋ませ、やがて、デイモンは床に四肢を落とした。
 引き抜く感覚に震える身を優しく撫でて落ち着かせ、革ベルトとリストバンドも丁寧に外してやる。
 ぎりぎり意識は保っているようだが、朦朧と焦点が定まっていない様子で、時折思い出したように体を痙攣させては後口から白濁を溢れさせた。
 ここで興奮して抱いてしまうと、さすがに壊してしまうか。
 黙ってあきらめ、ジョットは水を流し続けるシャワーノズルへと手を伸ばした。
 その後ろでは、二色の達する声が響き渡っていた。









 バスローブをまとったデイモンを横抱きにしたまま、ジョットはキングサイズのベッドの端に腰を降ろした。
 依然ぐったりとしている様子を愛おしげに労わりつつ、触れるだけのキスを交わす。
 反対側のベッドの端には、座っている骸の腰に抱きつく形で綱吉が膝枕を占拠していた。
 こちらの二人も同じようにバスローブ姿で、事後の痕をすべて流しきっていた。
「いい歳して洗い合いっこもないですよね」
「楽しかったからいいと思うけど」
「そうだな、今回もなかなか楽しめた」
「……そう言える性根が憎らしい」
 ひとり嫌悪を露わにしながらも、その両手はずっとジョットのバスローブを握りしめたまま離そうとしないという愛くるしいギャップから、ジョットは無言のままだらしなく顔を緩めた。
 しかし目敏く気付いたデイモンに、頬を軽くつねりあげられてしまう。
「なにをひゅる」
「んー、腹が立ったので」
 それから、デイモンはいまだ赤く残る痕を指先でゆっくりとなぞった。
 つい激情に任せて打ちつけたけれど、こうして痕を見てしまうと罪悪感だけが残るばかり。
 目に見えて落ち込むデイモンの髪を撫で、ジョットは穏やかに微笑んでみせた。
「この程度、デイモンにつけられたと思えば勲章も同然だ」
「……痛みますか?」
「キスのひとつで和らぐだろうな」
「……馬鹿」
 毒づいて、そっと、唇で柔らかく触れる。
「まさにバカップルですね」
「見てて恥ずかしくなる」
「見なければいいだろう、隣に部屋を用意してあるのだからそちらに移れ」
「部屋といえば、ここは結局どこなのですか?」
「そういえばまだ何も教えてもらっていませんよ」
 詰問する視線でもってして、デイモンと骸はそれぞれジョットと綱吉を睨みつけた。
 それから逃れるように綱吉はジョットへと視線を泳がせ、結局ひとり注目されたジョットが、やれやれと肩をすくめて答えた。
「このような特殊な施設、ラブホテルに決まってるだろう」
「……まぁ、そうでしょうね」
「撮影用か何か? 浴室とかやけに広かったけど」
「あぁ、知り合いにツテがあってな。4Pには持って来いだろう」
「よんぴい?」
 腕の中で怪訝そうにするデイモンを撫でてやりつつ、ジョットはこめかみに口付けた。
「それに、こちらからだと浴室の中がよく見える」
 言って指差した先を見遣り、デイモンは驚きに目を見開いた。
 カーテンで半分ほど隠されているが、不思議な反射を見せるガラスの向こうには、先ほどまで事に至っていた浴室があった。
 浴室の中には、ガラスの壁などどこにもなかったのに。
 なぜ。どうして。
 普段ならすぐに答えが出せそうなものだが、よほど混乱したのか、デイモンは落ち着かない様子でガラスとジョットを交互に見遣った。
 しかし、ジョットはニヤニヤしたまま何かを教える気配はない。
 最終的に、先に痺れを切らした骸がため息と共に答えてやった。
「マジックミラー、という物ですよ」
「そうそう、向こうからは鏡だけど、こっちからはガラスっていう」
「鏡だけれど……ガラス……?」
「あぁ、お前たちの絡む様もよく鑑賞できたぞ」
「かん……しょう……」
 じっとガラスを見つめて。
 理解した瞬間、デイモンは顔を真っ赤に染め上げた。
「ばっ、このっ、馬鹿者っ!」
「どちらかというと骸が一方的に責めているだけだったがな」
「状況は楽しまないと」
「あはは、骸らしい」
「ど、どうしてそう、平然としていられるのですか!?」
 ジョットの肩越しに骸と綱吉を睨みつけるも、反応はさらりとしたもので。
「別に僕は、綱吉の一番であれば他はどうとも」
「俺は、まぁ、デイモンなら百合っぽいしいいかなーと」
 これが若い感性なのかと、デイモンは眩暈すら感じてしまった。
 自分が一番でさえあれば他人と触れ合っていても許せるだなどと、到底理解できない発想だ。
 もしジョットが、例えば、他の誰かと抱き合っていたりしたら。
 考えただけで、鼻の奥が痛くなって、目頭が少しだけ潤んだ。
「デイモン?」
 覗き込む視線から逃れて、ジョットの肩口に額を落とす。
「どうしたんだ?」
 追及を避けるように俯いたまま。
「……ねぇ、ジョット」
「なんだ?
「私が、貴方ほど経験がない、というか、他を知らないのは、」
 浮かんだ涙を隠して。
「貴方にしか、この身を許したくないから、なのですからね……」
 最後は掠れて聞こえなかったけれど、言いたいことは充分にジョットに伝わっていた。
 その証拠に、ジョットはデイモンから背けた顔を片手で覆って、衝動を抑えるように小刻みに震えていた。
 綱吉と骸がいなければ、早急に至っていただろうが、
「すまなかったな」
 ジョットはなんとか堪えて、耐え抜いて、頭を撫でるだけに収めた。
 もちろん、心の中では、ふたりきりになってから即襲いかかろうと固く決めていたけれど。
 バカップルと言われても反論できない空気を出している二人を眺めながら、ふと、骸は膝元の綱吉に問いかけた。
「僕もあんな風な態度をとれば、綱吉は、ときめきます?」
「うーん」
 わずかに上体を起こしてジョットとデイモンを見遣り、再び太腿へ頭を落として笑う。
「あんな骸も可愛いとは思うけど、っぽくないよね」
「まぁ実際、バックは君だけですけど、僕は童貞じゃないですしねぇ」
「やっぱりそうだったんだぁ」
 髪や頬を撫でる手に、気持ちよさそうに色素の薄い両目を細める。
「まぁ美形だし、あーでも実際聞くとモヤモヤする」
「クフフ、昔の話ですよ」
 その手に自分の手を重ねて、綱吉は今度は少しばかり真剣な色を宿して問うた。
「今は俺一筋?」
 骸も真っ直ぐに綱吉を見下ろし、よく通る声で答えた。
「僕には綱吉だけです」
 真意を確かめるようにしばらく見つめ合った後に、
「じゃあ、いっか」
 顎を反らして、綱吉は骸のキスを受け入れた。
「こらそこ、じゃれてないで早く移動しろ」
「おや、横暴ですね」
「どうせならもっかい4P」
「よんぴいって何ですか?」
「駄目だ」
 きっぱりと言い放ち、ジョットはデイモンを抱き寄せて不敵に笑みを浮かべた。
「これ以上デイモンの可愛い姿は見せられん」
「ジョット……」
「うわぁ、すげぇドヤ顔決められた」
「まさに萎えさせる顔ですね……行きましょうか、綱吉」
「待って待って、俺が抱っこしてやるから」
 慌ててベッドから降りた綱吉は、伸ばされた手を引きつつ軽々と骸を抱き上げた。
「綱吉」
 声に引かれて振り向くと同時に、ホルダーのついた鍵が宙を舞った。
「うわ、ちょ」
 取ろうとしたものの両手が塞がっている。
 骸を降ろそうかと躊躇ったのも一瞬、鍵は骸が難なく受け止めていた。
「ごめん、ありがと」
「いいんですよ、クフフ、しっかり抱きしめていてくださいね」
「わかってる」
 今夜は離さないよ、とか三流映画のような台詞をわざとらしく告げて、綱吉は戸口へと爪先を向けた。
「じゃあ、また明日」
「おやすみなさい」
 遠ざかる足音が扉の向こうに消え、オートロックの施錠音を聞き届けてから。
 ジョットはベッドの中央へとデイモンを押し倒した。
 服を掴む手を優しくほどき、手の平に口付ける。
 そして、バスローブの紐をほどこうとした手を、デイモンはそっと押さえて止めた。
「ん、んー?」
「どうした?」
「いえ、いいえ、まさかとは思いますが……まだ、なさる、おつもりで?」
 浴室で何度もイかされまくったのだ、もはや出すモノは何もない。
 体力だって限界で、動くことすらままならない。
 それなのに。
 ジョットはもう一度、掬い上げた手に口付け、それを己の股間へと導いた。
「ひっ!?」
「今宵は俺が満足するまで、付き合ってもらうぞ?」
「む、無理! 無理です! 無理に決まってる!」
「すぐにあきらめるのはよくないな」
「だって、こんな、もう無理です!」
「安心しろ、お前がヤればデキる子だと俺は知っている」
「やめっ、やっ、んん――っ!!」
 長い夜は始まったばかりだと言うように、ジョットはデイモンに咬みついた。








× × ×

というわけでホモ百合エロ話でした!楽しかった!
スペたんだけが不遇でしたが、きっと明日にはイイことあるよ!がんば!



「ジョットの馬鹿!絶倫!もげろ!」
「グッ!呪いの言葉でチ○コが…!」
「これは…」
「すげぇ!」
「でっかくなった!」
「死んでしまえぇぇぇぇぇええ!!」




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